「おなかの調子を整えます」「脂肪の吸収をおだやかにします」。こんな表示がある商品を目にしたことがあるだろう。「機能性表示食品」と呼ばれ、含まれる成分により健康の維持・増進や疾病予防といった効用(機能性)を持つ。食品と健康を結びつけ、産業として育てる試みが全国で熱を帯びている。

 国は2015年、特定保健用食品(トクホ)など機能性を表示できる保健機能食品の一つに、機能性表示食品を追加した。トクホのような国の許可は不要。論文などで科学的根拠に基づく効用を明らかにし、国への届けが受理されれば製造ができる。表示に対する責任は事業者が負う。

 手続きのしやすさや費用負担の軽減に健康食品ブームも加わり、機能性表示食品の数は右肩上がり。全国で2200件を超えトクホを上回る。

 注目される理由は健康に限らない。機能性を有する1次産品の付加価値向上や生産拡大、サプリメント、加工食品の開発・製造、関連研究の促進など可能性は多岐に及ぶ。

 機能性表示食品など健康食品市場は1兆円を超えるとも言われる。国内では住民の健康増進や新産業創出のため地域を挙げて機能性の研究、食品開発に挑む動きもある。

 県内では17年に岩手生物工学研究センターが事務局となり大学や公的研究機関、行政などの産学官で、農林水産物の機能性活用に関する研究会を立ち上げた。

 啓発事業に力を入れ、企業の入会も増加。同時に農林水産物の機能性の解明などが進み、大船渡市の冷凍食品製造会社は年内にもイサダ(ツノナシオキアミ)から肥満抑制効果のあるオイル成分を取り出す新工場を稼働させる。

 本県発の機能性表示食品は現在、新岩手農協が申請し7月末に受理された久慈地域産の寒締めホウレンソウなど2件。このホウレンソウは目に良いとされるルテインが安定して含まれる。健康効果を武器にマーケットでの価値を高め、生産減に歯止めが掛かることが期待されている。

 県は本年度スタートした総合計画に、農林水産物の機能性成分に着目した取り組みを明記した。昨年度からは新規に事業を立ち上げ、成分分析機器の整備や特定の1次産品に絞った商品開発も実施。ただ農林水、商工など複数部門にまたがるテーマにかかわらず庁内の連携・推進体制は築かれていない。企業や大学などの関心もまだ限られる。

 食の魅力はおいしさや新鮮さ、安全性だけではない。本県は平均寿命も健康寿命も全国平均を下回り、健康への多様なアプローチは意義が大きい。海産物が持つ機能性の活用は復興にも資する。県を中心に施策強化が求められる。