第24回NIE全国大会宇都宮大会(日本新聞協会主催)は今月上旬開催され、本県から教員と新聞関係者約25人が参加しNIEの可能性を探った。2回にわたり、県内小中高校の教員が「深い対話を育むNIE」をテーマに開かれた大会の公開授業、実践発表を報告する。


確かな情報から未来探る(宇都宮市立一条中3年)

奥中山小・及川敏彦副校長

「私たちの未来はどうなるのだろう?」をテーマに意見交換する宇都宮市立一条中の生徒

 「私たちの未来はどうなるのだろう?」との興味深いテーマで授業を展開したのは宇都宮市立一条中学校の3年生。少子高齢化・情報化・グローバル化を未来社会を考える切り口とし、30年後の社会は「期待できる」か「不安が多い」かを考えさせるものだった。

 授業が始まる前、ロボットやAIの普及、外国人労働者の増加などの影響で仕事が無くなるといった「不安」を抱く生徒が多いのではないかと予想していた。しかし、予想に反し生徒の反応は多様なものだった。

 理由はすぐに分かった。先生が、社会の変化を取り上げた新聞記事を多様な視点から10枚ほど選び、あらかじめ生徒にしっかりと読み取らせていた。AIやロボットによってバリアフリー化や自動運転化が進み、人間が安心して生活できる社会が到来すると予測した記事に触れたり、多様な考えを持つ友人と考えを深め合うことで、大会の主題である「深い対話を育む」学びが実現できていた。

 人は情報が不確かだったり不足したりすると将来に不安を感じがちになる。多様な視点で、確かな情報を持つ新聞資料が、これからの未来を創る生徒への道標になると感じた。


社説読み比べ意見を発信(宇都宮大付属中3年)

石鳥谷中・城内千賀子教諭

複数の新聞社の社説について、グループ内で解説する宇都宮大付属中の生徒

 宇都宮大学教育学部付属中学校の3年生国語の授業公開を参観した。テーマは「対話的な学習活動を通して学びをつなげる国語科授業の創造~『情報の扱い方』に着目して」だ。

 授業では同じテーマで書かれてある複数の新聞社の社説を読み、個人でまとめ情報をグループ内で解説し合った。1人の発表時間は4分間。その後、読み手の共感を得るために必要なことや授業を通して考えたことを全体で共有した。

 グループ内の解説で、生徒が活用したのは個々にまとめたチャート図。文章を自分なりにまとめ、分析し、分かりやすく伝えるツールとして使用していた。同じ文章から読み取ったものなのに、一人一人まとめ方が違うことは、読みの深さにもつながっていると感じた。また、チャート図がしっかりとまとまっている生徒の発表力は、完成度に比例して高かったといえる。

 インターネットが発達した社会では、適切な情報を取捨選択し、自分自身の意見を持って伝える力が求められる。答えが一つではない問題について、自分の考えを表現したり、文章に即して情報を整理し内容を捉えたりする力が身に付くような授業を目指したい。


議論し現代の課題に理解(文星芸術大付属高2年)

沼宮内高・山下佳子教諭

出生前診断をテーマにディベートを行う文星芸術大付属高の生徒

 文星芸術大学付属高校2年生は「新聞記事を活用したディベートの実践-大学入試改革に備え『情報を多面的にとらえる能力』を養う」として授業を公開した。生徒は出生前診断をテーマに選び、新聞記事を中心に資料をそろえ、よく読み込み、準備を重ね、公開授業当日、賛成派か反対派をじゃんけんで決め、白熱した議論を展開した。

 タブレット係が資料をスクリーンに映し出し、判定員の1年生も資料を見て議論を聞くことができ情報通信技術(ICT)活用のヒントにもなった。同校英進科では20年前から総合的な学習の時間でディベートに取り組み、議論のため今日的な課題を学べるカリキュラムを組んでいるという。

 授業検討会で「当事者へのインタビューはあったのか」との質問が出された。昨年の盛岡大会で公開授業をした時も「実際にアクションを起こしているのか」という意見をいただいた。学びを社会と結ぶためには、新聞で世の中を知り、多様な力をつけるだけでなく「学びや培った力をどう社会へつなげていくか」ということが大切になる。社会とつながることで、新聞での学びが「自分事」としてより深まると感じる。


地元紙への投稿で文章力(那須塩原市立塩原小中)

好摩小・高橋和江校長

 那須塩原市立塩原小中学校の実践発表は「NIEを活用した義務教育学校における『作文指導』」。同校のNIE実践の特徴は、義務教育学校特有の弾力的な教育課程を活用し、1年生から9年生まで発達段階に応じた活動計画の下、全学年で毎月1回「作文の日」を実施しているところだ。

 7~9年では主に下野新聞「十代の声」への投稿に取り組む。投稿作文の題材は部活動や職場見学など身近な話題の他にNIE(スクラップ)ノートからも選ぶ。5・6年生は十代の声のほか下野新聞「子ども記者リポート」への投稿が中心のようだ。1~4年生では、新聞と親しむ活動として「新聞からひらがなを探す活動」などを展開する。

 投稿は2016年に始め約150作品取り上げられている。教師がコメントを添え校内にコピーを掲示。書く意欲の喚起とともに良き文章モデルとなっているようだ。子どもの作品に対する読者の声の掲載も多いとのこと。社会に向けて発した自分の思いに反応を得て子どもたちは自分も社会の一員であると実感したと思う。投稿を活用した実践から子どもたちを発信者、自覚的な社会の形成者として育てる在り方を学んだ。


図書館が記事選択し紹介(宇都宮市立豊郷中)

不来方高・畠山政文教諭

 「学校図書館を核とし、生徒の学びを広げ深めるNIEの実践」と題した宇都宮市立豊郷中学校の実践発表は「7紙の朝刊の隅から隅まで毎日目を通し、見るべき記事を選んで生徒に紹介する毎日のルーティンは土日を挟むと延べ21紙になる」との話から始まった。

 とにかく時間と集中力、そして責任感や速読力、そして心身の健康がなければ務まらない役目だ。岩手も司書教諭の配置を進めていく計画らしいが、授業もあり、部活動顧問もありの勤務では、図書館やNIEの充実には結びつかないのではないかと懸念される。

 豊郷中の充実は見事だ。司書と図書課主任、授業者との信頼関係をベースにした役割分担は、有機的な連携を作り上げ授業も生き生きしたものになっている。

 総合的な学習における元横綱輪島の訃報に関する記事の読み比べは、そもそも生徒に「喪主」や「角界」「花籠部屋」等の語彙(ごい)がなく、そこからの指導が必要なところなど、手をかけて進める様子が見て取れた。

 国語では情報の正確さにおいては新聞に勝るものはなく、その新聞の看板を背負った記事は授業でも大いに活用すべきとの見解には、大賛成である。


記事を題材に対話力養う(作新学院小学部6年)

二戸西小・大森健一校長

 作新学院小学部6年生の社会科の授業は、新聞記事から選んだ題材について、2派に分かれた話し合い。地元・下野新聞の“食品ロス”に関する記事から「ドギーバッグ(持ち帰り用容器)使用の是非」がテーマに設定された。

 反対派は「高温多湿の日本の気候では食中毒のリスクが高く、持ち帰って食べると味が落ちる」との意見を主張。賛成派は「保冷剤の活用や傷みやすい料理の持ち帰り制限、提供する分量の調整等の工夫で食中毒は防止できる」と反論。さらに、食中毒発生時の責任の所在や、日本の食料自給率の問題にまで話が及ぶ。

 子どもたちは、明るく、闊達(かったつ)。自分の考えを論理的に述べ、チーム内で発言をつなげ、反対する意見にも素直に同意する。相手の話をよく聞き、立場を理解する対話の基本が身に付いていることの表れであろう。

 授業の終わりには、相手の意見に納得し反対から賛成へと「引っ越し」した子が3人。それが反対派のリーダーたちだったのには驚かされた。

 「ドギーバッグの欠点は、工夫により改善できる」との意見に共感したとのこと。これこそ「深い対話」のたまものと感心した。