県内で兼業農家が急速に少なくなっている。2015年までの5年間で、実に1万戸近く減った。特に農業以外の所得が大きい第2種兼業農家の減少が目立つ。

 兼業農家は、農村集落の中で大多数を占める。今も県内農家の75%は兼業で、生活しながら農村の維持に大きな役割を果たしている。

 これまで国は「担い手」と呼ばれる専業プロ農家の育成に力を入れてきた。農業を成長産業にしようと支援を集中させ、大規模な農業者が県内にも育ちつつある。

 一方、兼業農家や小規模な家族経営の農家は支援から取り残されがちだ。所得の少ない農業を続けるよりは、と農地を貸して自らは営農をやめるケースが増えた。

 ただ県内には、中山間地で条件の良くない農地が多い。持ち主が営農をやめた所は担い手の農家や、集落営農で若い農業者が引き受ける例が多いが、作業量が増えて一部は限界に達している。

 そうなると耕作が放棄され、荒れる農地が広がりかねない。人が地域から離れていくことになれば、ただでさえ人口減が深刻な中山間集落の存続すら危ぶまれる。

 大規模農業で食料を生産するプロ農家育成の意義はあろう。半面、それだけでは集落を維持できない。兼業を含めた農の多様な営みが、地域にあることが大事だ。

 北上市は、その大切さにいち早く気付いた。工業都市のイメージが強いものの、それを担うのは兼業農家が多いと分析している。

 農村部の持ち家に住み、農業を営みながら、市内の誘致企業に通勤する。そうした人たちが、集落の農地・景観の保全と最先端のものづくりの両方を支えている。

 だが兼業は決して楽ではない。兼業農家はあまり手間のかからない米作りが主だが、米価は低迷が続く。赤字になっても、農地を維持するため米を作るのが実情だ。

 そこで市は、兼業農家の支援事業を行っている。無理のない形で、野菜や花作りなど収入増につながるアイデアを市民から募る。取り組みの結実を期待したい。

 兼業農家の存在は、新たに農業を志す若者のためにも大事だ。いきなり多額の資金や技術を要するプロ農家を目指すのはハードルが高い。他に収入源を持つ道もある。

 実際、県内では春から秋にリンドウや稲作などを組み合わせた農業経営を行い、冬場は建設会社の除雪作業で働く若者がいる。広い意味の兼業と言えるだろう。

 いくつかの収入があれば、自然の中で豊かに暮らせる。農村に若い人が残ることにもなる。集落を守るため、働き方も多様な形があっていい。