アニメは今や、観賞するだけの娯楽ではない。作品のモデルや舞台となった地域を訪れる「聖地巡礼」が盛んだ。こうしたファンの行動は「コンテンツツーリズム」と呼ばれる

▼漫画、映画をきっかけとした旅行や観光振興は長期ビジネスモデルだという。近畿大の岡本健准教授は編著書で21世紀における日本のコミック、アニメ、デジタルゲームの世界展開は「20世紀のハリウッド映画、ディズニーが与えた経済効果に匹敵する」(「コンテンツツーリズム研究」)と指摘する

▼自らの足跡をネットで発信、その地を何度も訪れる聖地巡礼のリピーターも多い。京都アニメーションが、本社のある宇治市を舞台に制作した「響け! ユーフォニアム」もそんな作品だ

▼架空の高校吹奏楽部が全国大会を目指す物語は、2015年の放映直後から同市に愛好者を引きつけた。ラッピング電車運行などさまざまなイベントに加え、ファンが吹奏楽団を結成しコンサートを開いた

▼京都文教大の片山明久准教授は地域とつながるこうした多彩なファンの行動を、第三者が提供した観光の価値を楽しむだけでなく「自ら観光の目的を創造する活動」(同書)と指摘する

▼放火事件から1カ月。アニメ界を支え新たな価値創造の土壌をつくり出してきた人たちが多く犠牲になった。あらためて冥福を祈りたい。