東日本大震災は決して風化していない。「あいまいな喪失」をテーマに先月末、札幌市で開かれた日本家族療法学会のシンポジウム。会場の熱気に、そのことを実感した。

 大切な人が見つからない。福島原発事故の影響で家があるのに帰れない。深い喪失感を抱える人をどう支えるか。入門書が今春刊行され、注目されるようになってきた。

 シンポには全国の精神医療や心理などの専門職が参加し、心の復興に長期的に寄り添う必要性を共有した。高い関心の背景には、各地で災害が頻発する中、東日本の経験を生かして備えたいという思いがあることだろう。

 九州南部を記録的豪雨が襲う中で始まった参院選。東日本の被災地からは、復興・創生期間(2020年度で終了)後の支援が尻すぼみになる懸念とともに、「この苦しみを、よそでも繰り返してほしくない」との声が上がる。

 その意味でも、今回の選挙は東日本の教訓を生かした災害対応について議論を戦わせる格好の機会だ。「震災復旧・復興に必要な体制を維持し、国の防災体制の一層の充実・強化を図る」「大規模化する災害に対応するため防災庁設置を目指す」など、各党はさまざまな公約を掲げる。

 国レベルで対応すべき課題は山積。発生から1年の西日本豪雨被災地では、50人超が避難生活のストレスなどによる災害関連死と認定された。「ブルーシートにごろ寝」という避難環境の劣悪さは東日本でも指摘されたが、改善は遅々として進まない。

 被災者に対する訪問支援活動も、東日本同様に人材不足が課題で、孤立の深まりが懸念される。こうした現状で、南海トラフ地震など来るべき大災害時にどうなるのか。

 日本の災害復興施策はハード面が重視されてきた。だが、災害公営住宅入居後も生活資金不足、健康不安、深い喪失感などを抱える被災者の継続支援が必要なことは、東日本の経験から明らかだ。

 東北弁護士会連合会は5日、盛岡市で「災害復興支援と連携」をテーマにシンポジウムを開催。一人一人が抱える困りごとを総合的に把握し、伴走型で支える「災害ケースマネジメント」の制度化や、平時からの官民連携の重要性などについて議論した。

 復興・創生期間後の支援はどうなるのか。東日本の被災地は今、岐路に立つ。

 東日本の経験を生かし、発災当初から中長期まで一貫して、一人一人の復興を支える施策を強化できるか。生かせずに被災者の苦しみが繰り返されるのか。日本の災害対応の在り方も今、岐路に立つ。

 各候補は、そのような自覚を胸に、大きなビジョンを語ってほしい。