「図書館が利用者の情報を警察に提供していいのですか」。北海道苫小牧市の無職の男性(68)が、北海道新聞社(札幌市)にメールを寄せた。苫小牧市立中央図書館が警察の任意捜査協力に応じて貸し出し履歴などを提供していたことが昨年末に判明し、不安だという。道内の人口上位15市への取材では、札幌など8市が「提供する」、旭川など7市が「提供しない」とした。

 日本図書館協会は1979年、図書館の自由に関する宣言(54年採択)を改訂。「利用者の秘密を守る」との項目を設けて読書記録や利用事実を外部に漏らさないと明記し、憲法35条に基づく裁判所の令状がある場合は例外とした。

 きっかけは75年。東京都立図書館が警視庁公安部の捜査員の求めに応じ、資料の複写申込書1万~2万枚の閲覧を認めた。この際示されたのが、令状ではなく任意で捜査協力を求める捜査関係事項照会書だった。

 その後も警察から同様の照会依頼が続き、図書館の対応も変化。同協会が全国の公立図書館に行ったアンケートによると、捜査機関が文書(照会書)で情報提供を依頼してきた際、95年調査では依頼された91館中応じたのは12館(13%)だったが、2011年調査では同192館中113館(59%)が応じていた。

 照会書は強制力の伴う令状と異なり、刑事訴訟法に基づく捜査関係事項照会手続きによる。応じる義務の有無や拒否した場合の罰則の規定はなく、同協会はこれを根拠に、人命に危険が及ぶなど特別な理由がない限り、任意捜査で応じる義務はないと主張する。

 桃山学院大経営学部の山本順一教授(図書館情報学)も「利用者情報は個人の思想信条に関わる。一般的な行政情報より慎重に扱われるべきだ」と話す。

 一方、警察庁は99年12月の通達で「回答を拒否できない」とし、事実上の義務だとする見解を示した。

 京都産業大社会安全・警察学研究所長を務める田村正博教授(社会安全政策)は「特別の理由もなく拒否すれば迅速な捜査が妨げられ、市民の生活や安全を守る上で支障を来しかねない」と説く。

 (北海道新聞社提供)