国の文化審議会が30日、2021年のユネスコ世界文化遺産登録を目指す国内候補に、一戸町の御所野遺跡を含む「北海道・北東北の縄文遺跡群」を選んだ。

 縄文は「国内予選」をなかなか突破できなかっただけに、地元の喜びは大きい。ただ、足踏みしている間に世界遺産は増え続け、新規登録の抑制傾向は強まる一方だ。

 青森県など4道県は気を緩めることなく、国際記念物遺跡会議(イコモス)対応などに万全を期す必要がある。

 そして、登録を後押しするのが地域の理解だ。この機に多くの人が遺跡に足を運んで価値を学び、宝を次代に守り伝える意識を高めてほしい。

 縄文はかねて、さまざまな課題を指摘されてきた。縄文文化は全国に広がるのに、なぜ「北海道・北東北」限定なのか。1万年以上も自然と共生し平和な定住生活を営んだ文化的特徴を、現行の資産で過不足なく説明できるか。

 遺跡の建物復元と「真実性(オーセンティシティ)」の問題についても、対応が求められるだろう。今年、世界遺産になった大阪の「百舌鳥(もず)・古市古墳群」は、真実性がイコモスから高く評価された。縄文は大丈夫だろうか。

 古墳群の主要な構成資産の多くは、宮内庁が天皇や皇族を葬った「陵墓」として管理し、立ち入りを厳しく制限。イコモスの委員は「これなら真実の姿が未来に伝わる」と管理の在り方を評価した。

 さらに、一部の古墳について、発掘で確認した円筒埴輪(はにわ)を並べて当初の姿に復元、墳丘にも登れるようにする計画があったが、委員は「今のままでいい。それが真実性」と全否定したという。

 世界遺産登録は当初、西欧圏が中心だった。「石の文化」の西欧では、真実性の観点から復元には否定的。イコモスが1965年に採択した「ベニス憲章」は、復元について「いっさい理屈抜きに排除しておくべき」とした。

 だが、「木の文化」の日本では、大半の木造建築は腐り、柱穴などしか残らない。遺跡の価値を分かりやすく伝えるため、縄文はじめ多くの遺跡で建物を復元している。

 90年代に非西欧圏での登録が促進される中、真実性の解釈は弾力化。だが、古墳群についての高い評価は、裏返せば、復元に否定的な見方が今なお根強いことを物語る。

 縄文の登録に際し、文化継承の多様な在り方、復元の必要性についてイコモスの理解を得る努力が必要だろう。

 御所野遺跡では、焼失竪穴住居の発掘調査、上部構造の研究に基づく実証的復元を進め、全国的にも評価が高い。他の遺跡の復元はどうか。イコモスを納得させる理論武装を急いでほしい。