日本を代表する企業家稲盛和夫さん。世界的企業京セラを興し、経営破たんした日本航空を再建したことでも知られる。「盛和塾」はその経営哲学を学ぶ場。年内で36年間の活動を終える

▼塾生は国内外に約1万4千人。教えは数あれど代表的なものが、自分でなく他に尽くす「利他の心」。トップとして人格を磨く大切さを説き、県内にも共感の声は多い

▼企業経営者は近年、人材確保に頭を悩ませている。民間シンクタンクの調査では、今春県内に就職した新入社員の4割近くが将来の転職か独立を志向する。企業は採用後も、常に人材の流出に神経をとがらせる

▼期待されているのが高齢者の力だ。政府は最新の成長戦略で、70歳までの就業機会を企業に確保させる方針を掲げた。将来不安が高まる年金問題への対処という側面はあるにせよ、健康で働く意欲のある人に長く働ける環境をつくる方向性に異論はない

▼他方、雇用延長は人件費を膨らませ、経営側には高齢者雇用をリスクと見る向きもある。会社に残ってもキャリアを生かす場がなく、居心地まで悪ければ人は去る。働き手がいなければ企業の存続は危ぶまれる

▼大学生の就職戦線は大詰めだが、高校生はこれから。高齢者雇用の状況は会社が社員を大事にしているか、トップの人格を表すとも言える。企業選択の参考になろう。