言葉のキャッチボールは難しい。がんの再発で闘病生活を送る友人。病状の進行に伴い強まる痛み、つらい抗がん剤治療。切々とつづる苦しみの言葉を、どう受け止め、答えたらいいのか

▼その友人に元気を与えてくれたのが高校野球岩手大会。幼少期を過ごした大船渡市の大船渡高の活躍だった。決勝は花巻東に敗退。注目の佐々木朗希投手は登板しなかったが、最後までチーム一丸で戦い抜いた

▼仲間を信じ懸命にプレーする球児たち。応援する友人。その様子に、作家寺山修司の姿が重なり合う。太平洋戦争の敗戦で既存の価値観が崩れ、言葉が力を失った中、寺山少年は野球に熱中。キャッチボールが繰り広げられる光景を、次のように記した

▼「終戦後、私たちがお互いの信頼を恢復(かいふく)したのは、どんな歴史書でも、政治家の配慮でもなくて、まさにこのキャッチボールのおかげだったのではないだろうか?」。どんな会話より凝縮された、確かな手応え

▼米大リーグで活躍する菊池雄星投手、大谷翔平選手。そして今大会の佐々木投手。近年、本県からは傑出した選手が相次ぐ。個の力の源泉には、チームの力がある。仲間と積み重ねた心のキャッチボールがある

▼夏連覇を果たした花巻東もチーム力で一戦一戦勝ち上がってきた。甲子園でもその力を発揮し、県人に元気を与えてほしい。