参院は衆院のカーボンコピーではない-。このキャッチフレーズを掲げ、政治活動を行ったのは故椎名素夫参院議員だ。与野党の権力闘争から常に距離を置き、晩年は時宜(じぎ)を得た批判で存在感を示した

▼その椎名氏が政党をつくったことがある。党名は「無所属の会」。既成政党に属したくない議員に救命ボートを差し出したい。そんな思いの同志と設立したのは20年前、1999年のことだ

▼与党が暴走すれば辛辣(しんらつ)な論評で堂々対峙(たいじ)する。かと思えば、日米外交の裏舞台ではひそかに米国要人が訪ねてくる。永田町きっての知米派とあって、その人脈の広さは外務官僚、与野党の国会議員から一目置かれる希有な政治家だった

▼「なにも既成政党にいなくとも、お国のために仕事ができるんだよ」。紫煙をくゆらせ、さりげなく語る姿を思い出す。無所属の会は4年余で解党したが、参院のカーボンコピー論に一石を投じたことは間違いない

▼参院は衆院の追認機関か。この指摘が絶えない。安倍政権以降、強まる1強政治に巻き込まれ、良識の府とされる抑止力は風前のともしびだ。参院不要論が出るのも致し方ない

▼さて、岩手選挙区は大接戦の末、横沢高徳氏が初当選した。激しい与野党対決だったが、良識の府の意義をいま一度肝に銘じ、車いすの目線から令和の政治の扉を開いてほしい。