今年は勝海舟没後120年。江戸城の無血開城に道を開き内戦の危機を回避した幕末・明治の大立者の一人。9月には東京都大田区に記念館が開館するという

▼海舟の体験を聞き書きした「氷川清話」には新政府側との「談判」の場面がしばしば登場する。談判は事件の始末や取り決めについて立場の異なる相手と論じ合い談じ合うこと

▼詩人の故長田弘さんは著書「なつかしい時間」で氷川清話から引用しながら、海舟の談判の作法を「たがいに『少しの傲慢(ごうまん)の風なく、同席する』こと、そうしてたがいに『赤心(せきしん)を披(ひら)く』こと」「『野暮』を言わないで、相手に対する『敬礼を失わない』こと」と説明

▼その考え方を「この国が失いつづけてきた大事なものではなかったか」と案じ、現代は互いの間に「言葉の破片はたくさん飛び散ってはいるけれども、まかりとおるのは一人勝手と無愛想だけ」と嘆いた

▼元徴用工訴訟をめぐり亀裂が広がる日韓、核合意で対立する米国とイラン、離脱交渉の英国と欧州連合(EU)など複雑な背景があるとはいえ、国際関係でも談判の精神が失われてはいまいか

▼きょうは参院選の投開票日。国民の代弁者を選ぶ貴重な機会。激しい選挙戦は幕を下ろした。国会は与野党の談判の場でもある。未来を見据え対話する良識の府となることを願って一票を投じたい。