大阪城復元時にエレベーターを設置したのは「大きなミス」-。参院選公示直前、20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)の夕食会での安倍晋三首相の発言に、障害者団体が反発。野党も一斉に批判し、バリアフリーや社会的弱者への対応が問われる中で選挙が始まった。

 ただ、その後の選挙戦で、こうした問題が主要な争点になったという印象はない。本県の障害者や家族の受け止めは、落胆と言うより冷静だ。

 「大阪城の問題に限らず、障害者が声を上げると『権利ばかり主張して』と世間からたたかれ、傷つく。その繰り返しだけど、小さくても声を上げないと何も変わらない」

 「そもそも障害福祉が争点になったためしはない。経済優先の価値意識を変え、多様な人を包摂する優しい社会をつくっていくには、何十年もかかるだろう」

 障害者権利条約の批准、障害者差別解消法の施行など、「権利」の面は確かに前進してきた。そこには、粘り強い障害者運動の歴史がある。だが、現実社会は依然としてバリアーだらけ。東京五輪・パラリンピックの開催が迫る中、車いす利用者に対応するホテル客室の改修が遅れている現状に、海外からも懸念の声が上がっている。

 ノンステップバスやユニバーサルデザインタクシーの普及、病院や商業施設の駐車場に設けられた車いす駐車区画など、目に見えて進んできた面もある。一方で、障害者からは「せっかく駐車区画があっても、健常者が車を止めていることがよくある」との指摘も。理解や配慮は道半ばだ。物申す障害者に対するネット上のすさまじいバッシングからは、差別意識の根強さが浮かび上がる。

 昨年、障害者の社会参加を長らく阻んでいた巨大なバリアーが明らかになった。中央省庁の障害者雇用水増し問題だ。再発防止へ雇用促進法が改正され、政府は法定雇用率達成に向け採用を急ぐ。

 ただ、水増し発覚から今年4月までに採用した障害者のうち早くも130人以上が離職。職場環境の改善、悩みを相談できる態勢整備など、ハード・ソフト両面のバリアフリーへ課題は山積している。

 参院選では、年金制度をはじめとする社会保障が大きな争点になっている。考えるべきは、老後に必要なのはお金だけではないということ。介護が必要になったり、認知症になっても安心して生活し、家に引きこもらず外出できる地域をどうつくるか。まさに、政治の出番と言えよう。

 「障害者にとって優しい街は、すべての人にとって優しい街」。各党は、障害者や家族の小さな声をすくい取り、政治に反映してほしい。