先人はすごい。そして、現代人もすごい。国立科学博物館のチームが、約3万年前に日本人の祖先がどのように海を越えてきたかを探る実験航海に挑戦。丸木舟で台湾を出発し、約45時間かけてゴールの沖縄県与那国島に到着した

▼最大の難関は、流れの速い黒潮をどう渡り切るか。当初は草や竹の舟で挑んだが、速度が出せず失敗に終わった。今回は、3万年前と同様に石斧で杉を切り倒し、中をくりぬいた丸木舟を準備。ついに成功した

▼実験してこそ、先人の知恵や苦労が分かる。2009年夏、一戸町の御所野縄文博物館などが取り組んだ実験を取材した。縄文時代の工法で巨木を伐採加工するという

▼ほのぼのした光景だが、真面目な実験だけに作業工程は詳細に記録。石斧を4339回打ち下ろし、巨木を伐採。その後、くさびを打ち込み割っていく。「ポンッ」という音と共に半分に割れた時は感動だった

▼丸木舟は各地の縄文遺跡から出土しており、当時の物流や漁労に大活躍だったらしい。北海道と北東北は津軽海峡に隔てられているが、縄文人は盛んに行き来していたとみられ、共通する文化圏を形成していた

▼21年の世界遺産登録を目指す、御所野など「北海道・北東北の縄文遺跡群」。近く国の文化審議会で、推薦候補に選ばれる見通しだ。荒波が待ち受けないことを祈る。