中東から不穏な空気が広がっている。イランの核開発問題を巡り米国との間で高まる緊張だ。米国側は軍事的対応を示唆している。

 万が一、武力衝突が起きれば、影響は中東にとどまらない。中東に多くの原油を依存する日本経済が大きく揺れるのは必至だ。

 核を材料に揺さぶられる世界。平和を乱す核の存在を改めて憂う。イラン、米両国には自制を求めたい。

 日本の役割もあるはずだ。先ごろの安倍晋三首相のイラン訪問では成果はみられなかったが、今後も政府は和平のためにできることに努め、被爆国として非核化の重要性を訴えたい。

 4年前、国際社会は「核なき世界」を前進させる一歩を踏み出したかに見えた。イランの核に関する、欧米など6カ国との合意だ。核開発活動を10~15年間制限する一方、それまでの欧米側の経済制裁を解除することとした。

 しかし昨年、トランプ米政権が離脱を表明。経済的な打撃を受けたイラン側は態度を硬化させた。原発原料となるウランの濃縮度を徐々に引き上げている。国際原子力機関(IAEA)は、核合意上限の数値を超えたことを確認している。

 しかし、イラン側はさらに段階を進める可能性があると警告。このまま濃度を上げれば、核兵器使用に可能な水準に達する恐れがある。

 このような「小出し」の形で警告するのは、英独仏などの支援を得ようとしているからだ。しかし各国は米の同調圧力により苦慮している。

 トランプ大統領の本音は「戦争回避」とみられるが、米国内で先制攻撃論が強まれば予断を許さない状況になりかねない。両国とも挑発はやめるべきだ。

 国家や地域間に複雑な対立関係や勢力図がある中東に火が付けば、恐るべき規模に拡大する恐れがある。武力衝突を回避しなければならない。

 イランでは、ひそかに進めていた核開発計画が2002年、反体制派の暴露で発覚。軍事強国化において、脅威的な破壊力のある核兵器の誘惑は拭えないようだ。

 北朝鮮も同様だ。核兵器を体制護持の「宝剣」と位置付けているからこそ、核放棄に応じようとしない。

 約20年前に北朝鮮から弾道ミサイルが発射され、一部は日本列島を飛び越えて三陸沖の太平洋に達した。その後、ミサイル開発の技術は格段に向上しており、核を伴ったミサイル兵器への脅威は強まるばかりだ。

 日本がかつて見舞われた核の悲劇を繰り返してはならない。世界は核の抑止、そして非核化へ向けて動かなければならない。