主人公のあだ名を題名にした野球漫画の名作「ドカベン」は、大きな弁当箱のこと。底が深いアルミ製の弁当箱に白米をぎっしり詰めて、おかずは梅干し1個だけ。いわゆる日の丸弁当だ

▼「ドカベン」は土方弁当の略という。今は「土方」は不快用語とされ、新聞では当事者が言うのでない限り使わない。だが、そもそも「ドカ」には「並外れた」という意味がある。「ドカベン」という略語の妙

▼この漫画が盛んに読まれていた頃に「あんなに白い米ばかり食べ続ければ、かっけになるはず」といった論評に接し、米ぬかの効用を知った覚えがある。主人公は玄米に近い「分(ぶ)つき米」を食べていたのだろう

▼精米率10割を白米として、どれだけ玄米の風味を残すかで5分づき米、7分づき米などと言う。その昔、江戸の地方出身者が手足のむくみやしびれ、倦怠感に襲われたのも、今となれば白米だけの食事が原因だ

▼その症状は、故郷で療養すると回復したことから「江戸患い」と称された。米ぬかが、かっけを防ぐビタミンB1を含むことなど知るよしもない。「江戸にはえたいの知れぬ魔物がいる」と思ったかもしれない

▼まっただ中の参院選は、国政に地方の思いを届ける好機。米ぬかの滋養を忘れ「江戸患い」に陥っていないかどうか。各党の容体をしかと見極め、1票を処方したい。