ハンセン病患者の隔離政策で、本人と共に深刻な偏見、差別の中で生きてきた家族にとって、ようやく前を向く一歩になるだろう。

 元患者の家族561人が国に損害賠償と謝罪を求めた訴訟で、熊本地裁は28日、国の責任を認め、賠償を命じた。

 元患者本人の訴訟では、2001年の熊本地裁判決が隔離政策を違憲とし、国に賠償を命令。小泉純一郎首相(当時)が控訴を断念し、国は謝罪した。だが、その後創設された補償の対象は本人だけで、家族は放置されてきた。

 家族の絆を断ち切られ、地域でつまはじきにされ、近所の人に「うつる」と陰口をたたかれ、学校でいじめられ、親が元患者ということがばれて離婚に追い込まれ、仕事を辞めさせられ…。

 原告側は、数々の偏見や差別を受けたにもかかわらず、国は対策を怠り、平穏に暮らす権利が侵害されたと訴えた。一方、国側は「家族は隔離の対象ではなく、差別や偏見を直接助長していない」などと主張していた。

 「直接」ではなかったにしても、地域社会にハンセン病に対する強固な偏見、差別感情を植え付けた原因は国の隔離政策だ。家族の苦しみに寄り添い、国の無策を断じた地裁の判断は納得できる。

 根本匠厚生労働相は「今後の対応は関係省庁と協議したい」と述べた。01年の熊本地裁判決の際と同様、政治判断で控訴を断念することが、真の差別解消へ力強いメッセージになるはずだ。速やかに家族に謝罪するとともに、家族の被害実態の全容解明も求められる。

 原告勝訴の判決は、旧優生保護法下で不妊手術を強いられた障害者らにとっても、希望の光になるのではないか。

 被害者が国に損害賠償を求めて提訴したのを機に救済の機運が高まり、今年4月、被害者に一時金を支給する救済法が議員立法で成立した。ハンセン病の救済策などを参考にしたが、一時金支給の対象は被害者本人のみで、配偶者らは除外されている。

 国は配偶者の苦しみにも向き合い、一時金の支給対象を拡大すべきだ。

 今回の訴訟と優生手術訴訟の共通点は、原告の多くが匿名であること。偏見や差別が根強い表れと言えよう。

 安倍晋三首相は優生手術被害の救済法成立に際し、「全ての国民が疾病や障害の有無で分け隔てられることのない共生社会の実現に向けて、最大限の努力を尽くす」との談話を発表した。

 疾病や障害で苦しむのは本人だけではない。家族も苦しんでいる。本人も家族も支える仕組みづくりへ最大限努力することが、差別を解消し、共生への道を開く。