誰が、何のために-。紫波町赤石地区で「農業用水の流水量を調整する弁を覆う鉄製のふたの盗難被害が相次いでいる」との情報が読者から寄せられた。被害は約2年前から発生し、なくなったふたは50個以上。深さ1メートル超の箇所もあり、子どもや農業者らの転落の危険も懸念される。いたずらにしては大規模で、転売目的との見方も。所有する赤石第一水利組合(高橋実組合長、組合員144人)は対策に頭を悩ませる。

 のどかな田園風景が広がる同町北日詰のあぜ道。ふたが失われ、中の弁がむき出しになっていた。案内してくれた高橋信副組合長(66)は「車で通行でき、民家が少ない場所に被害が集中しており、子どものいたずらとは思えない」と憤った。

 被害は同組合が管轄する南日詰、平沢の両地区でも確認。鉄製のふたは同組合が農業用水を各田畑に送水する配管からの流水量を調整する弁を覆う。直径30~40センチ、重さ3~4キロで、あぜ道に設置。形はマンホールにも似ているが、固定されていない。

水量を調整する制水弁の鉄製のふた

 組合は全部で約100個設置。2017年秋ごろに1、2個がなくなり、被害は18年春ごろには20個ほどに拡大。組合は約20個を購入して再設置したが、今月までに既に20個以上が取り外された。

 組合は周辺巡回を強化するが、対象範囲は160ヘクタール以上で追いつかないのが現状。紫波署にも相談したが、被害届は出していない。高橋副組合長は隣接する他の組合の地域では被害がないとし「転売か新たな原料として再利用する目的か」と推測する。

 県内では15~16年、青銅製の橋名板や橋の欄干に付いた真ちゅう製の擬宝珠(ぎぼし)などが盗まれる被害が発生したのは記憶に新しい。ただ、一般社団法人日本鉄リサイクル工業会(東京都)によると、5月現在の東北地方の鉄スクラップ価格は1トン当たり2万6千円~2万8千円で、前年同期より8千円程度下落。単純計算で鉄製のふたは1枚100円にも満たない。

 同組合は経費削減や転売防止のため、鉄以外の素材のふた設置なども視野に入れる。高橋組合長(80)は「転落事故や設備の劣化が懸念される。盗難も事故も起きないようにする」と対抗策を練る。