「社会を把握する力」の育成に向けキャリア教育に新聞を活用する盛岡市津志田の見前中(菅井雅之校長、生徒548人)の出前授業。岩手日報など県NIE協議会加盟4社の記者の指導で、生徒はスクラップする記事の選び方や新聞作りの技を学んだ。同校は朝学習の時間を利用した新聞週間を学期ごとに設け、地域や郷土を知り社会への関心を高める取り組みを展開していく。

 ▼前文から探す

 出前授業は、スクラップの手法(4日)と新聞作り(10日)の2回行われ、各クラスで記者が教壇に立った。新聞作りの授業では、生徒は紙面構成や見出しの付け方を学んだ。

 岩手日報記者は「新聞作りの工夫」と題し、最重要の記事を右上から順に配置する紙面の構成を解説。記事は大事なことから書く逆三角形の構成で、見出しは記事内容が一目で把握できる「究極の要約」と説いた。

 1年生は、岩手日報5月1日付1面の「令和幕開け 新天皇陛下が即位」の記事で学習。見出し部分を空欄にしたワークシートを使い、前文(リード文)からキーワードを探し見出しをグループで考えた。「変わったことがニュース」「前文に重要なことが書かれている」との助言で、前文の重要性も学んだ。2、3年生は「令和」の記事に加え6月2日付1面の「聖火リレールート」の見出しにも挑戦した。

 ▼見出しに工夫

 グループごとの発表では的確な見出しも多く紙面と同じものも。藤田翔士(しょうじ)さん(2年)は「新聞を読むように心掛けているが改めて前文の大切さが分かった」と実感していた。

 「新聞作り七つの鍵」として5W1Hや伝える相手を意識して書く大切さが説明されたほか、菊池雄星投手メジャー初勝利の記事の見出し「一勝懸命 耐え抜く」を例に目を引く見出しの工夫が紹介された。

 細川莉衣奈(りいな)さん(1年)は「5W1Hを明確にし逆三角形を意識した記事を目指そうと思う」と目を輝かせ、吉田光里(ひかり)さん(3年)は「人を引きつける見出しの重要性を学んだ。新聞作りに生かしたい」と意欲を見せた。

社会へ関心高める スクラップシート作り

心に残った記事を切り抜き、要約・感想を書いたスクラップシート。クラスメートが感想を書いた付箋を貼り完成

 「新聞スクラップ」の授業は、「切り抜き」「コメント・要約と感想」「グループ交流」の3段階で進められた。

 冒頭、記者がスクラップの効果について「たくさんの記事に触れることで社会への関心が高まり、短時間で読みコメントを書くことの繰り返しは読解力や書く力、表現力を付ける」と説明した。

 生徒は事前に選んでいた記事を切り抜き、シートに貼り付け。大事な部分、友達に読んでほしい部分に蛍光ペンでラインを引き、要約と選んだ理由や感想を記入した。

 グループの机に置かれたのは「大谷翔平選手」「シベリア抑留」「震災復興」とさまざま。それぞれ発表し、友達のスクラップへのコメントを付箋に書き交換した。

 米航空宇宙局(NASA)の有人月面着陸計画を選んだ高橋里采(りな)さん(1年)は「スクラップは難しかったけれど、新聞の読み方を学ぶことができた」と笑顔。下谷雅哉さん(3年)は「自分の考えを伝え友達からも学べる。新聞を深く読むきっかけになる」と効果を実感した。

 同校は昨年度から、見前小、津志田小と小中連携のキャリア教育に取り組む。スクラップはその一環。地域や郷土を学び、自分に何ができるか役割を考えるために導入した。新聞週間では切り抜きの日、要約・感想の日、意見交換の日を設け、朝学習の10分間で展開する。


担当・門屋なつみ教諭 実感できる「知る喜び」

 門屋なつみ主幹教諭に新聞を使った教育の狙いや効果を聞いた。

(聞き手 NIE・読者部 鈴木弘樹)

 -スクラップ、新聞作りの出前授業の狙いは。

 「キャリア教育の目的『社会を把握する力』や書く力を育てるのにNIEの活用が効果的と考えた。これまで学級新聞や個人新聞は特定の生徒が熱心に取り組んできたが、出前授業をきっかけに全校生徒の新聞熱が盛り上がってほしい」

 -行った感想は。

 「自分の意見を述べるのが苦手な生徒がスクラップに積極的に取り組む姿を見て感動した先生がいた。また、記事を通じて友達と交流するのが楽しいと感じる生徒が多かった。知らないことを知る喜びや追究する面白さを実感したようだ」

 -新聞の利点や可能性をどう見るか。

 「生徒は思ったより自分の考えを持って記事を選んでいた。新聞を広げると、興味のない記事に目を向けることができ、限定的なネットとは違う。一方で、生徒は友達の意見に『自分は違う』と言うのがなかなか難しいようだ。新聞を通じ意見を述べ合うことで生徒同士のコミュニケーションが深くなる」

 -今後の日程と目標は。

 「スクラップは7月中に週3日、朝学習で取り組み2、3学期も継続する。新聞作りは、1年生が7月、宮古市で行う被災地学習のまとめで実施。2学期には全校で取り組み、文化祭で発表したい」