県境越しに、国への不信や怒りの声が伝わってくるようだ。秋田市の陸上自衛隊新屋演習場への配備が検討されている地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」に関し、防衛省が同演習場を「適地」とした調査に誤りが見つかった問題だ。

 加えて同省が地元で開いた住民説明会で、東北防衛局の男性職員が居眠りをしていたという。言語道断の事態に、秋田県知事が「県民を愚弄している」と怒りをあらわにするのももっともだ。

 岩屋毅防衛相は釈明に追われる一方で、新屋演習場が配備の適地とする判断に変更はないとの認識を堅持しているのは理解し難い。国と国民の安全を保障する防衛政策が、国民をないがしろにして進められていいはずもない。

 米朝首脳会談を経て北朝鮮情勢は大きく変化。弾道ミサイル発射を想定した住民避難訓練が取りやめになるなど、イージス・アショア導入が閣議決定された2017年当時とは状況が異なる。「適地」の検討どころか配備計画そのものの適否を再検討する必要もあるのではないか。

 適地調査で誤りが見つかったのは、新屋演習場を除く青森、秋田、山形3県の計19カ所のうち9カ所。「適地」とされた同演習場周辺住民の要望を受けて実施され、「19カ所はいずれも配備に向かず、新屋演習場が最適」と結論づけられていた。

 問題の9カ所は、レーダーから出る電波を遮る高い山があるとの理由で「不適」とされたが、その根拠となった仰角(山を見上げる角度)を実際より過大に見積もっていたことが判明。計算に用いた米グーグルの衛星利用サービス「グーグルアース」の地形断面図が、距離と標高で異なる縮尺を用いているのに気づかなかったという。

 現地調査はしていないというのも、ずさんさに輪を掛ける。はなから「新屋ありき」の配備計画であることを疑われても仕方あるまい。

 佐竹敬久秋田県知事が「安全保障は国の専権事項」と断った上で「協議を打ち切ったら、あの人たちはすぐ押し切ってしまうから話し合いには応じる」と語っているのは意味深長だ。

 沖縄県の米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設計画を巡っては、海域の埋め立て工事着手に前後して広範な軟弱地盤の存在が判明。工期も予算も大幅な見直しを迫られる中、県民投票で7割が「埋め立て反対」の意思を示した地元からは「そもそも適地と言えるのか」などと疑問の声も上がる。

 「あの人たちはすぐ押し切ってしまう」。この言葉に込められた地方の思いを、国は軽く考えるべきではない。