アジアで初開催となるラグビー・ワールドカップ(W杯)日本大会は開幕まで100日。釜石市内ではコンビニにも出場国の国旗やジャージーが飾られ、高まるムードに市W杯推進本部の新沼司推進監は「おおむね準備は順調」と手応えを口にした。

 開催12都市の中でも、日本大会の象徴とも言えるのが東日本大震災の被災地、釜石市だ。大会唯一の新設で、最も小さい会場の釜石鵜住居復興スタジアムは児童生徒ら約600人が津波から難を逃れた小中学校の跡地に建つ。

 新日鉄釜石の日本選手権7連覇から34年の歳月が流れても、その記憶が深く刻まれるラグビーの街。「北の鉄人」の系譜を継ぐ釜石シーウェイブス(SW)RFCの選手たちは被災後、練習再開を後回しにして献身的にボランティアに精を出した。語るべきストーリーが、ここにはある。

 9月25日にフィジー―ウルグアイ、10月13日にナミビア―カナダの2試合が組まれた。強豪国同士の対戦とは言い難いカードでも、海外から観戦希望の引き合いが多いのは被災地への関心の高さからだろう。釜石開催は復興する今の姿と支援への感謝を伝える「復興W杯」と言える。

 3年前、復興を冠したイベントが岩手国体だった。それは国内の選手団へ感謝を伝える機会となったが、今回は出場4カ国以外からも押し寄せるファンを含め全世界に向けて発信しなければならない。

 そのための手立ては整いつつある。9月25日には釜石市内の小中学生、10月13日には釜石市以外の沿岸部の児童を招待し、2戦合わせて約2500人の子どもたちが感謝の気持ちを表す計画だ。市民ホールでは津波の語り部を配することも検討されている。

 もう一つの課題は全県的な取り組みへウイングを広げられるか。釜石とキャンプ地の盛岡、宮古、北上各市を除く29市町村は接点がそうない。観客、大会関係者が釜石以外の地域にも足を運び、広く復興の姿を見てもらう仕掛けが必要となろう。その点、県内外から独自ボランティアに115グループ、延べ2万人超(5月末現在)が応募したのは心強い。これをてこに地域の温度差を埋め、オール岩手へ活動を進展させたい。

 「大会を通じて関わった人たちが笑顔になり、未来への自信をつかめれば成功だ」。釜石SWの桜庭吉彦ゼネラルマネジャーの言葉だ。開催経費のうち釜石市の実質的な持ち出しは5億7700万円が見込まれる。巨額を投じても開催して良かったと言えるレガシー(遺産)を築けるか。大会後、選手やファンと岩手、釜石の間に絆が生まれ、新たなラグビー文化につながることを期待したい。