働きたい人は、70歳まで働けるようにする。その「努力義務」を企業に課すと政府が打ち出した。来年の国会に法改正案を提出する。

 高齢になっても仕事をしたいと思う人は多い。国の調査では、3人に2人が65歳を超えて働く希望を持ち、3割は「働けるうちはいつまでも」と考えている。

 仕事の意欲が高いベテラン社員には、培った豊かな経験もある。それを発揮すれば企業と社会にとって有用だ。70歳まで働ける仕組みづくりの意義は大きい。

 課題は、その意欲と経験をどう生かすか。現状を見ると、定年後に再雇用した社員の能力を企業は必ずしも引き出し切れていない。

 今の高年齢者雇用安定法は、65歳までの雇用を段階的に義務付けた。①定年の延長②定年制の廃止③継続雇用制度の導入-から選択する形だが、企業の8割は③の定年後再雇用を選んだ。

 その結果、60歳で定年を迎えた人は嘱託などの非正規で働き、賃金も低い例が目立つ。定年前とは違う仕事を与えられる場合が多く、経験や人脈が生かされない。

 安い給料で、畑違いの仕事をする側は意欲が落ちていく。「年金をもらうまでは」と、我慢して会社に残ることになりかねない。

 このため法改正で、政府は働く人の「特性に応じた活躍」を打ち出す。①~③に加え④他企業への再就職⑤フリーランス契約⑥起業支援⑦社会貢献活動への資金提供-に選択肢を広げた。

 ベテラン社員の活動の幅は広がるが、例えば⑦の場合、社会貢献活動に企業がどのような資金提供をするのかはっきりしない。実効性のある制度設計が求められる。

 企業内で労使が話し合い、個人の適性を生かす処遇に改めることが第一だ。役職に就けたり、賃金の見直しが必要になる。定年延長や廃止の再検討も求められよう。

 多くの人にとって、仕事は生活の糧を得る手段とともに、生きがいでもある。個人の力をさらに高めてもらうための支援も欠かせない。

 70歳雇用は、若者の職や賃金を奪うとの見方もあるが、人手不足の中では避けられぬ流れだ。20年後、働く人の5人に1人は65歳以上との国推計も出されている。

 本県は、65歳以上まで働ける企業の割合が88%と5年連続で全国トップに立つ。70歳以上でも働ける制度がある企業も30%に達し、高齢者雇用の先進地と言える。

 むろん病気や家族の介護などで働けない人は多い。趣味や家族との時間を大切にする人もいる。個々の人生観が尊重される社会でなければならないのは、言うまでもない。