全国高等学校NIE研究会(会長・昼間一雄都立葛飾商高校長)の第17回全国大会は「高校におけるNIEとは」をテーマに開かれ、約120人がNIEの裾野拡大を探るとともに有効な新聞活用の方法を学んだ。(大会は3月23、24の両日、横浜市の日本新聞博物館で開催された)

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 1日目のシンポジウムは「高校で(若手)教員をどのようにNIEに誘ったらよいか」について討論。神奈川県立三浦初声(はっせ)高の金子幹夫教諭(54)、都立赤羽商高の林敏昭教諭(51)、静岡県立駿河総合高の深沢邦洋教諭(53)、秋田県立六郷高の佐藤香教諭(56)が経験談を交え意見を交わした。

 金子教諭は、経済、政治教育といった複数の研究会で「必ず同じ教員に会う」とし「より良い授業づくりを目指す人には20~30人の若者がついている。キーパーソンを見つけ、新聞活用への関心を高めてもらう仕掛けが有効だ」と提案した。

 林教諭は「常にさまざまな教科で使えそうな記事を紹介できる仕組みが必要」とし、深沢教諭は「キャリア教育などNIE以外の目的達成の手段と位置付け、成果を上げることが校内に広げる鍵」と訴えた。

 佐藤教諭は、教科横断の取り組みを紹介。「各教員の専門性を大切にしながら結びつくことで、新聞の教材としての効果に気付いてもらえる」と提言した。

 2日目は、埼玉県立特別支援学校坂戸ろう学園の白井敏子教諭(61)ら3人が実践を発表。白井教諭は「ろう学校高等部における新聞活用~新聞記事を使って日本語を育む」と題し、全教科で行った新聞活用や語彙(ごい)力向上の活動を報告した。

 「目から入る情報は聴覚に障害のある生徒にとって大切。生徒は敏感になり、毎朝、新聞を読んでいる。若い先生も興味を持ち率先して活用するようになった」と紹介した。

佐藤教諭 専門性生かし連携を

「教科横断的な授業は新聞活用が広がるきっかけ」と説く佐藤香教諭

 高校の教科は専門性が高く、新聞活用を勧めることに抵抗がある。数字で表せる効果も明確に示せないため、忙しい若手教員にも勧めづらい。

 一方、地歴公民の教員に解説してもらった国語の授業は専門性を生かしたもので、理解を得やすかった。横断的な学びの重要性、学んだことと社会とのつながりを重視する新学習指導要領は、共同でNIEを実施する追い風になるのではないだろうか。

 強制や無理な勧誘ではなく、教科の専門性と新聞との関わりや、教材としての有効性に気付く機会が大切だ。同じ目標を持つ教科内の理解が教科間の連携を生み、新聞活用が広がるきっかけになると考える。

深沢教諭 目的達成への手段に

「NIEは他の目的達成の手段にしている」と説明する深沢邦洋教諭

 全校でNIEに取り組むがNIEを前面に出していない。NIE(信頼の高い情報源を活用した教育)、キャリア教育(より良く生きる力を育む教育)、ESD(持続可能な社会の創り手を育む教育)をセットにして展開している。

 全校NIEの鍵は▽やさしいNIE▽異質なものとの関連付け▽成果実感▽新陳代謝。「(新聞を)見る→読んで考える→(考えを)書く」というやさしいNIEと、ESDの一環として活動することで教員の負担は小さい。

 核となる教員が地道に続け、別の目的達成の手段と割り切り、生徒も教員も納得する成果を3年以内に上げることが、高校教員の心に火を付けるポイントだ。

林教諭 生徒を介して広がり

「常に相談に乗れるような仕組みづくりが大切」と訴える林敏昭教諭

 新聞の必要性(NIEを行う理由)を生徒に理解させたことが、効果的活用につながった。

 授業冒頭10分間で記事の要約を継続した結果、アンケートで「興味のないことでも理解しようとしている」とする生徒が他のクラスより10%以上高くなり若手教員と情報を共有している。また、クラス替えとなった生徒が「日直スピーチ」を担任に提案。NIEが生徒を介して広がった。

 他方「NIEという言葉が大上段に構えているようだ」「上から言われてやるのは嫌」との声があり、実践事例を紹介する環境も少ない。

 いつでも情報提供できる体制を整え、仕組み化することでハードルは下がる。

金子教諭 授業改善できる教材

「熱心な教員への働き掛けで若手にも広がる」と話す金子幹夫教諭

 あらゆる研究会に参加している教師の後ろには、多くの若手がついている。この熱心な教師に働きかけることで、NIEに取り組む若い教師が増えるのではないだろうか。

 授業改善に熱心な教員でも、授業で実践できる教材は一つだ。実践できなかった教材の上位三つにNIEが入るようなインセンティブをまず考えたい。

 「生徒に自由に記事を選ばせ、自由に表現させる」「教師が記事を選び、どのようなことを学習するか指示する」。NIEには、生徒の力を伸ばす二つのフィールドがある。

 魅力的な授業スタイルの一つとして新聞活用を提案することで、NIEの輪が広がると考える。


組織的に実践し効果 昼間会長、一問一答

 全国高等学校NIE研究会の昼間一雄会長に、高校でNIEを行う意義やNIE全国大会後の岩手への期待を聞いた。

(聞き手 NIE・読者部 礒崎真澄)

 -高校でNIEを行う意義は。

 「キャリア教育、主権者教育、防災・平和教育など新聞はあらゆる面で活用できる。実業校でも進学校でも、社会にどう貢献できるかを生徒が考える上で有効だ」

 -シンポジウムは「(若手)教員をどのようにしてNIEに誘うか」だった。

 「高校は教科の専門性が高く、教員が個で動いている。新聞を使う人もいるが『個人商店』だ。組織的に取り組むことで、継続的に各教科で取り上げることが可能になり、裾野の拡大と効果につながる。管理職としては、環境の整備と人材の育成に力を入れている。学校経営の柱に据え学力向上委員会にNIE推進チームを設けた。学校全体でやってこそ浸透する」

 -NIE全国大会後の岩手に期待することは。

 「新学習指導要領には改めて新聞の適切な活用を求める記述が多くある。NIE協議会と教育委員会が一緒に活動する時だ。日本を支える若者が世の中の動きを見極められるように、教員が同じベクトルで、生徒がどう学ぶかの創意工夫、深い学びに導く授業力の向上を進めてほしい」