日本最大の前方後円墳「仁徳天皇陵古墳」(大山古墳)などで構成される大阪府の「百舌鳥(もず)・古市古墳群」について、国際記念物遺跡会議(イコモス)が世界文化遺産への登録を勧告した。6月末からアゼルバイジャンで開かれるユネスコ世界遺産委員会で正式決定の見通しだ。

 古墳群は、古代王権の形成期に当たる4世紀後半から5世紀後半までに築造された49基からなる。イコモスは「傑出した古墳時代の埋葬の伝統と社会政治的構造を証明している」と高く評価した。

 古墳は列島に広く分布。最北の前方後円墳が、奥州市胆沢区の角塚(つのづか)古墳だ。付近の発掘調査で大規模集落跡などが見つかり、当時の様相が少しずつ分かってきた。

 大きな関心を集めたのが2014年、宮城県栗原市の入(いり)の沢遺跡の調査。権威の象徴で、通常は古墳の副葬品となる銅鏡などが、火災に遭った住居跡で見つかった。王権に連なる集落で、何が起きたのか。北方勢力側との間で戦いが起きた可能性などが指摘され、同市で開かれたシンポジウムは議論が白熱した。

 文献が乏しく謎の多い古墳時代。今回の世界遺産登録が、身近な古墳文化の価値を住民が再認識する契機になってほしい。各地の調査研究成果の積み上げが、列島の古墳時代解明に欠かせない。

 今後、いかに「世界の宝」の価値を高め、末永く継承するか。主要な構成資産の多くは、宮内庁が天皇や皇族を葬った「陵墓」として管理し、立ち入りは厳しく制限。今回の登録に際しては「立ち入りできないからこそ保存状態は良好」との主張が幸いイコモスに認められたが、学術研究レベルは不十分だ。

 「仁徳天皇陵古墳」にしても、被葬者は実のところ未確定。過去に見つかった埴輪(はにわ)の年代などから、仁徳天皇陵ではないとの説が有力だ。

 古墳の将来的な保全も課題。周囲の水による浸食、上部に茂る巨木の根が内部に及ぼす悪影響も指摘される。現状を把握し、より良い保全策を講じる上でも幅広い知見が欠かせない。陵墓の「尊厳」を守りつつ、学術研究や保存活用をどう進めるか、登録を機に議論を深めたい。

 20年は自然遺産候補「奄美・沖縄」の登録審査を予定。順当に行けば21年に一戸町の御所野遺跡を含む「北海道・北東北の縄文遺跡群」の登録審査を迎える。

 古墳群についてイコモスは「都市における開発圧力」が資産に与える影響を懸念し、対応を求めた。御所野の場合は、遺跡本体の周辺部に広大な緩衝地帯を設けている。市街地に近い他県の構成資産も、イコモス調査に向け万全の対応が求められる。