国会議員からまさかこんな暴論が飛び出すとは。北方領土に絡む丸山穂高衆院議員の「戦争奪還」発言には信じられない思いだ。

 所属していた日本維新の会は除名処分とし、松井一郎代表は「議員を辞めるべき」と述べたが、本人はその考えを示さず無所属で活動する構えだ。しかし、議員としての資格はないと言っていい。速やかに辞職すべきだ。

 「戦争」の言葉は、丸山氏が同行していた北方領土へのビザなし交流訪問団の国後島の宿舎で、元島民の団長に対して発せられた。

 「戦争でこの島を取り返すのは賛成ですか、反対ですか」と切り出し、団長が「戦争なんて言葉は使いたくない」などと答えても、しつこく尋ねている。

 団長の驚きはいかばかりだったか。旧ソ連に不法占拠され、追い出された元島民らは、不合理な思いに耐えながらも、交流活動による信頼構築を通じて道を開こうとしてきた。戦争がもたらす悲痛を知るからこそ、平和な解決を人一倍望んでいるはずだ。

 そんな思いと努力を丸山氏は踏みにじった。参加していた訪問団員の多くは発言を知って混乱し、影響を心配して泣く人もいたという。罪は重い。

 戦後の重要課題である領土返還には国民の認識の広がりが欠かせない。江戸時代に盛岡藩が警備に就くなど本県とも関わりは深く、北方領土返還要求運動県民会議が中学生視察団を北海道に派遣するなどして関心や理解の促進に努めている。

 そして政府は長年、交渉を積み重ねてきた。そんな中で手段として「戦争」を口に出したのは常軌を逸している。

 憲法で、国際紛争を解決する手段としては戦争を放棄する日本の国会議員として考えられない。議員の失言が相次ぐが、最低、最悪レベルと言っていいだろう。

 ロシア上院の国際問題委員長から「日ロ関係の流れの中で最もひどい(発言だ)」と批判が出ているように、ロシア側を刺激したのは間違いない。難航を極めている領土返還交渉に影響を及ぼし、国益を損ないかねない。

 丸山氏は酒に酔い、禁止されているのに宿舎から外出しようとしたという。外出して拘束されていれば外交問題に発展した可能性もある。かつて飲酒でトラブルを起こして党から厳重注意を受け、飲酒した場合は辞職する意向を示していたが、反省は形だけだったのだろう。しかし、今回は許されない。

 今月下旬に日ロの外務・防衛閣僚会議が開かれる。政府は平和主義を説明するとともに、領土に対する日本の立場を貫いてほしい。