二戸市が市内全8小学校の5、6年生に週1回、岩手日報を配り朝学習に活用する取り組みが始まった8日、同市堀野の中央小(吉度康男校長、児童224人)児童はこども新聞「日報ジュニアウイークリー」を広げた。

 5年1組の教室では、担任の後藤敬亮教諭が児童に新聞を提供する市の事業を説明。「新聞に触れる貴重な機会。みんなで読んでいこう」と呼び掛けた。

 ▼走り方を学ぶ

 結末を楽しみに読む物語と結論から先に書く記事の違いを説明した後、「全部のページを開いてみよう」の掛け声で児童は思い思いにページをめくった。新たに即位した天皇陛下の記事を熱心に読む子もいれば、「いわての虫」コーナーに目を輝かせる子も。

 「運動会も近いし、みんなで走り方の記事を読もう」と、後藤教諭は1面の「徒競走ポイントスクール」の記事を勧めた。運動会を間近に控え、児童の目は真剣。リズム良くスキップする方法や肘や膝の使い方を読み、連続写真を見て「うーん」とうなずいたり「へー」と声を上げたり。

 一人で読んだ後はグループで交流。「いままで重心が後ろだった」「スキップのリズムが分かりやすく書かれている」と気付いた点を共有し笑顔が広がった。

 菅原颯斗君は「初めてじっくり新聞を読んだ。走り方の記事は参考になる」とにっこり。田村涼栞(さやか)さんは「新聞で大事なことが分かる。毎朝、見出しだけでも読みたい」と関心を高めた。

 吉度校長は「運動会の季節、求めていた記事。走り方の振り返りにもなったようだ」と児童の発言に耳を傾けた。同校では新聞を読む週1回の朝学習を「新聞タイム」として活動する予定だ。

 ▼社会への関心

 「学びの広がるまちづくり、未来を拓(ひら)く人づくり」を掲げる二戸市は、子どもたち一人一人に1冊ずつ書籍を贈っている。児童各自への新聞提供もその流れと市教委は説明する。

 配布は、日報ジュニアウイークリーが折り込まれる毎週火曜日。小学5、6年生約400人全員を対象としている。県内外の記事を読み、社会情勢への関心を高める機会の提供が狙いで、古里を深く理解する効果も見込む。

 鳩岡矩雄(のりお)教育長は「新聞記事は、短時間で子どもの心に響く。さまざまな情報に触れてほしい」と期待する。

図書館にワークシート 本紙子ども新聞貸し出しも

中央小の図書室に設けられたNIEコーナー。日報ジュニアウイークリーも貸し出す

 全校で新聞活用に取り組む二戸・中央小。図書館の新聞コーナーには、岩手日報こども新聞(日報ジュニアウイークリー)をクリアファイルに入れ、本と同様に貸し出している。学校によると、借りて読む児童が増えているという。

 本年度からは、学習に生かすため教員が作成したワークシート「新聞『ここに注目』シート」を設置。興味、漢字、要約、家読(うちどく)、言葉、考え、自由-の7種類で、家庭学習に利用している。

 上段に記事を貼るスペース、下段に記入欄を設けた。「興味」のシートは感想と選んだ理由、「漢字」は記事中の知っている漢字のチェック、「家読」は家族との話し合い、「言葉」は意味調べ-など、難しくならないように工夫した。

 井藤(いとう)直子教諭は「簡単な作りだが、児童が新聞に触れ、楽しいと感じるように考えた」とした上で「端的に大事なことを伝える新聞記事を読むことは、文章構成の学習になるほか、読み取りや発信の力を付ける」と効果を強調する。


鳩岡矩雄教育長に聞く 共感力や機微を養う

 二戸市の全8小学校で始まった岩手日報を朝学習で活用する取り組みについて鳩岡矩雄教育長に狙いや期待する効果などを聞いた。

 (聞き手 NIE・読者部 鈴木義孝)

 -活用を決めたきっかけは。

 「市内の新聞購読率を調査した結果、予想以上に低い数字が出て衝撃を受けた。しかし、各学校に置いている新聞は、子どもたちによく読まれており、家庭で購読しないのなら学校で、と考えた」

 -期待する効果は。

 「学力や読解力の向上につなげるのが狙いではなく、子どもたちに新聞が面白いものだと知ってもらえれば、所期の目的は達成だ。日報ジュニアウイークリーを教材としては考えていない。児童期は人と共感する力、機微を養う重要な時期。毎週1回、紙面に触れることで、人として内面の大切なものを形成してほしい」

 -新聞の魅力について。

 「新聞は人間そのもののノンフィクション。見知らぬ世界に入り込める読書とは異なり、現在の人々の姿が載っている。日報ジュニアウイークリーは短時間でも読むことができ、県内から世界まで幅広い話題を取り上げている。興味のなかった物事にも新たな発見があれば学びの幅が増す」

 -活用の方法は。

 「市教委として決めた方法はなく、各学校に任せている。各教諭が負担にならない範囲で、より良い活用方法を試行錯誤し教材として工夫する中で、教員にも教育の喜びを感じてもらいたい。一緒に読むことで、子どもたちが何に興味を持ち、どう感じるのかを知ることができる。児童と教員の双方向に良い効果が期待できる」