憲法を改正するには、衆参両院で総議員の3分の2以上の賛成を得て発議し、国民投票で投票総数の過半数を獲得する必要がある。

 現在、安倍政権下での改憲に前向きな勢力は衆参で3分の2を超えている。数の上では発議が可能な状況だ。

 既に自民党は改憲案を用意しており、審議を急ぐ構えを際立たせる。だが肝心要の国民投票の全体像は、依然として明確にイメージし難い。

 先週、久々に再開された衆院憲法審査会で主テーマとなったCM規制の是非も大きな課題だが、改憲が「投票総数の過半数」で決まる方式にも多方面から議論がある。

 国政選挙の投票率は低下傾向が続く。どんなに低い投票率でも1票でも多ければ改憲が認められるという規定が、はたして国の基本である憲法を決める国民投票の趣旨に合致するのかどうか。

 発議を受け、国民に改憲案を広報するために衆参両院に設置される国民投票広報協議会の公正さを担保する仕組みも必要だ。ネットや会員制交流サイト(SNS)による発信への対応も後手に回る。

 18歳、19歳も有権者となる中で、投票買収などの犯罪行為は少年事件として扱うべきかという問題もある。

 改正の中身はもちろん大事だが、議論を進める前提として手続きをしっかり定めておくのは当然。国民の意思を問う仕組みがあやふやでは、国の未来に禍根を残す。

 野党がCM規制を求めているのは、改憲賛成派、反対派の資金力の差が投票結果を左右することへの懸念が背景にある。国民投票法は、国民に自由な議論を促す目的から、運動費用やポスターなどの枚数に通常の選挙運動のような規制は設けていない。

 民放連は表現の自由を守る立場からCM規制強化には反対の立場。一方で、テレビCMで資金力のある側の主張がゴールデンタイムを独占する可能性は否めない。

 双方に理屈が立つ状況で、良案を探るのが憲法審の役割だろう。だが与党側が議論に乗る気配は乏しい。民主主義の理念を挟んで二項対立に陥っているのは、現在の改憲論議の現状をしのばせる。

 改憲手続きを精査しないまま自民党が独断で条文案を示し、改正憲法施行のスケジュールにまで言及するのは、与野党が意見を一致させながら議論を積み重ねてきた憲法審の流れにそぐわない。

 共同通信の直近の世論調査では、多くが改憲に関心を抱く様子が浮かび上がる。野党側も自らの主張を言い募るばかりでは、国民の期待に応えているとは言い難い。いずれ憲法を政局にするような国会では、改憲を国民に問う資格が疑われよう。