理念は評価したい。地球温暖化対策の長期戦略策定に関する政府の有識者懇談会がまとめた提言だ。二酸化炭素(CO2)を大気中に排出しない「脱炭素社会」に向け、従来の日本の政策から踏み込むことを求めている。

 温暖化対策が喫緊の課題とし、従来の延長線上にはない新たな方向にかじを切る姿勢が必要と指摘。脱炭素社会を今世紀後半にも実現できるよう要望し、官民による分野横断的イノベーション(技術革新)が不可欠と強調した。

 産業革命前と比べた気温上昇を2度未満、できれば1・5度に抑えるパリ協定の目標でも「実現に向け日本の貢献を示す」としている。

 では、具体的にどう道筋をつけるのか。理念を現実化するためには官民挙げてのスクラムが求められる。

 鍵となる電力分野では、再生可能エネルギーの主力電源化を促した。世界の動向に沿うもので当然だ。ただ、再生エネは固定価格買い取り導入による普及の一方、課題も浮き彫りになっている。

 優位な価格設定によって太陽光発電に偏っている。地元参画より大手資本事業が目立ち、地場産業育成の効果は当初期待されたほどではない。また、環境影響評価の改革の遅れが環境破壊の発生や懸念をもたらし、本県を含め住民の反発を生む例が相次ぐ。

 さらに風力発電では国内メーカーの新型開発が海外勢の後塵(こうじん)を拝し、生産から撤退するケースも出ている。現時点での普及の差が技術差につながっているのはやむを得ないが、未来に向け、官民の連携がまさに問われる。

 「脱炭素」は、CO2排出量が多い石炭火力の行方にかかる。しかし提言は「可能な限り依存度を下げる」の表現にとどまり、廃止に踏み込んではいない。座長は「野心的な方向性を打ち出した」とし、石炭火力廃止などは「最終的に政府が決定すべきだ」とした。実は座長の文案では「長期的な全廃」が明記されていたが、産業界代表委員の反対で後退したという。

 環境保護団体「気候ネットワーク」は多数の石炭火力発電所建設計画が進んでいる現状を挙げ、「石炭火力推進の方向転換を含まなければ、長期戦略は見せかけだけの極めて不適切なものにしかならない」と指摘する。

 再生エネは拡大するが、その速度は見通せない。また、業界が温暖化対策を強調する原発の展望は暗い。当面は火力頼りとなろうが、天然ガスの比率を高めるなどしつつ、再生エネや水素エネルギーなどの技術革新を待ちたい。

 政府は、6月に大阪市で開く20カ国・地域(G20)首脳会合までに長期戦略を策定する。政策の前進が問われる。