三陸鉄道(中村一郎社長)は、JR山田線(釜石-宮古間、55・4キロ)の移管を受け、久慈-大船渡・盛間がリアス線として一つにつながった。全線開通から間もなく1カ月。久慈から盛までの163キロを直通する列車も上下5本が走る。三陸沿岸沿いを走る魅力的な観光列車だが、所要時間は約4時間30分。鉄道ファンなら「快速や急行列車にも乗ってみたい」「途中停車が釜石駅だけの特急列車はないのか」などという思いを抱くのではないだろうか。

 三鉄には、JRや私鉄にある特急や快速などの速達列車が存在しない。その理由は何か。答えは速達列車は「走らせることができない」のではなく「走らせない」からだ。三鉄は「沿線住民の足」として利用されている。運行本数は1日上下23本。1時間に1本程度しか運行していない。仮に速達列車を走らせると、通過駅への停車間隔はさらに広がり、沿線住民の利便性が大きく損なわれてしまう。

 太平洋を見渡す絶景ポイントでは車両速度を落とし、ゆっくり走行する=三陸鉄道車内から撮影

 「観光客に車窓からの眺めをゆっくり楽しんでもらいたい」という思いも三鉄にある。野田村の安家川橋りょうや普代村の大沢橋りょうの上は、三陸海岸屈指の絶景ポイント。日中は、列車の運行速度を落とす乗客サービスを行っている。団体客を乗せているときには車両を一時停車させるほどだ。中村社長は「急いで通過するよりも通常の各駅停車でゆっくり走った方が、三陸を訪れた人たちに喜ばれるのではないか」と強調する。

「ゆっくり車窓からの景色を楽しんでほしい」と期待する中村一郎社長

 ただし三鉄によると、速達列車を走らせることは決してできないわけではないという。三鉄の速達列車を求める問題は、2017年3月の県議会でも取り上げられた。県側も「ダイヤ編成や費用に支障はない」と答弁している。中村社長も「利用者のニーズや要望があれば今後、そういった運行を考えるかもしれない」としている。

 今年の10連休、三鉄で4時間30分の長旅を楽しんでみてはどうだろうか。