2016年10月1日。2巡目岩手国体の本大会は重量挙げ成年男子56キロ級艾(よもぎ)幸太と同62キロ級内村湧嬉の県勢ダブル優勝で幕を開けた。それから46年前

▼1巡目岩手国体も本県に第1号の優勝をもたらしたのは重量挙げの選手。先日73歳で亡くなった佐々木哲英さんだ。これで勢いづいた本県選手団は念願の天皇杯を獲得する

▼中大時代にフライ級のジュニア世界記録を樹立した逸材は大学卒業後、両親の古里岩手に移り、岩手国体ではバンタム級に階級を上げて王座に就いた。さらに2年後の72年にはミュンヘン五輪フライ級で4位。「重量挙げは力ではなく、スピード」が口癖だった

▼これだけの実績を残しながら、盛岡市内丸界隈(かいわい)では焼き鳥屋「てつ」の主人と言った方が通りはいい。東京から盛岡へUターンしたオリンピアンが選んだ第二の人生は赤ちょうちんだった

▼十数年前にのれんをくぐった。紫煙と焼き鳥の煙にいぶされ、琥珀(こはく)色に染まった壁と天井。ジョッキの半分以上にウイスキーを注いだ濃厚なハイボールは2杯で酩酊(めいてい)すると言われた

▼「4位だから金銀銅に続く鉄メダル」。気さくな人柄が愛され、店はいつも常連客で埋まった。バーベルを竹串に持ち替えた太腕繁盛記。昭和の風情漂う名物店は令和を待たずに四十余年の歴史を閉じた。再訪できずにいたのが悔やまれる。