旧優生保護法(1948~96年)下で「不良」「劣等」「なくてもよい命」とされ、不妊手術を受けさせられ、沈黙を強いられてきた障害者ら。20年以上の時を経て、ようやく救済策が動き出す。

 被害者に「反省とおわび」を示し一時金を支給する法案が、衆院本会議で全会一致で可決された。参院での審議を経て来週にも成立し、月内に施行の見通しとなった。

 だが、その中身と、国家賠償請求訴訟などを通じた被害者側の訴えとの隔たりは、埋まっていない。心身の深い痛みへの理解が足りないと言わざるを得ない。

 法案前文に記される謝罪の主体は「われわれ」。各地で原告側と国側が対立する訴訟への影響を避けるため、あいまいな表現に落ち着いた。

 原告側は旧法の違憲性を主張し「国の謝罪」を求めている。だが、国側は違憲性に言及せず「救済制度を立法する義務があったとは言えない」などと主張している。

 法案作成に携わった与党幹部によると、「われわれ」は「主に国会と政府を意味する」。さらに優生手術を是とした社会風潮こそ問題であり「主体を『国』とすれば矮小(わいしょう)化してしまう」とした。

 苦しい言い訳にしか聞こえない。法に基づき国策として「命の選別」を続けたことこそ、そのような社会風潮を下支えし、強化したことに思いが至らないのか。

 一時金の額は320万円だが、各地の国賠訴訟ではいずれも1千万円以上、最大で3千万円台後半を求めている。ハンセン病訴訟での補償額が800~1400万円だったことと比べても、不妊手術被害者の痛みを過小評価している感が否めない。

 5月28日には仙台地裁で国賠訴訟の初の判決が出る。司法判断も踏まえ、謝罪の主体や一時金の額について見直していくべきだ。

 厚生労働省によると、旧法下で不妊手術を受けたのは約2万5千人だが、個人が特定できる記録は約3千人分にとどまる。法案が、記録がない人も幅広く救済するための仕組みを盛り込んだことは評価される。ただ、被害者のプライバシーに配慮しつつ制度を周知する方法など、残された課題も多い。

 与野党が法案成立を急ぐ背景には、参院選が近づくと、党を超えた共同歩調が難しくなる懸念もあったとされる。それにしても、法案作成過程で、被害者の思いをくむ取り組みは不十分だったと言えよう。

 「私たち抜きに私たちのことを決めないで」。世界的な障害者運動の合言葉を国は真摯(しんし)に受け止め、理解の得られる救済制度へ改善を重ねていくべきだ。