怒りを通り越して、哀れというほかない。桜田義孝五輪相が、東日本大震災からの復興を巡る失言で辞任した。事実上の更迭となる。

 発言は、本県の自民党衆院議員、高橋比奈子氏のパーティーで飛び出した。「復興以上に大事なのは高橋さん」と、被災地を軽視するようなあいさつをした。

 議員を励ますつもりで、言葉を選び間違えたのかもしれない。だが、こうした言動がいかに被災者を傷つけるか。思いが至らないところに大きな問題がある。

 被災地に関する桜田氏の失言は今回にとどまらない。3月には、震災時の道路が「健全に動いていたから良かった」と述べた。被災の実情を見ていたのだろうか。

 当時は道路が寸断されて困難を極めたのだから、はなはだ理解が足りない。宮城県石巻市を「いしまき」と再三言い間違えるあたりにも、認識不足が表れている。

 2020年東京五輪は「復興五輪」と位置付けられる。それを担当する閣僚としての資質を明らかに欠いていた。辞任は当然だろう。

 他にも桜田氏は、競泳の池江璃花子選手の白血病公表に「がっかりした」と述べるなど、失言と謝罪を繰り返した。言葉に責任を持つ政治家の資質も不足している、と言わざるを得ない。

 閣僚の任に堪えないことは明白にもかかわらず、安倍晋三首相はかばい、続投させてきた。今回の更迭は、21日投票の衆院補選への影響を考慮したとみられる。

 昨秋の内閣改造では、桜田氏ら大臣を経験していない待機組の初入閣が目立った。能力を問わぬ「在庫一掃」人事とともに、首相の任命責任も厳しく問われる。

 さらに今回の問題は、不適格な大臣が発した軽口として片付けられない。「失言」から透けてくるものに目を凝らす必要がある。

 一昨年には、今村雅弘復興相が震災被害を「まだ東北で、あっちの方だったから良かった」と言い放ち、辞任に追い込まれた。桜田発言も通底していよう。

 震災は自分たちの身近ではなく、遠く離れた所で起きた。そんな感覚がどこかにあるのではないか。「あっちの方」「復興以上に大事」の発言に透けて見える。

 それが復興そのものや、復興五輪を担う閣僚の口から出るのだから根は深い。「閣僚全員が復興大臣」との首相の言葉もむなしく、政権全体の問題とも考えられる。

 後任の五輪相には本県被災地出身の鈴木俊一衆院議員が再登板した。内閣、政権、そして国民がもう一度、被災地と心を通わせることができるよう率先する責務があろう。