「現時点で誘致の表明に至らない」。一方で「段階は前に進んだ」。「前進」を明言したことを評価し、次のステップへつなげたい。

 国際リニアコライダー(ILC)の誘致を巡り文部科学省が7日、見解を示した。誘致の意思表示には至らないが、国内外での議論を継続していくという。

 極めて慎重な言い回しと言えよう。本県の関係者からは政府の真意を測りかねる声が聞かれるが、誘致の是非が固まりきらない現状では苦肉の表現ではないか。

 研究者による日本学術会議は、費用対効果の問題から「誘致の支持には至らない」と結論付けた。国内学術界が重ねた議論を政府は無視するわけにはいかない。

 半面、日本の前向きな判断を待つ欧米の期待をつなぎ留める必要もある。中国も大型加速器を建設する動きがあることをにらめば、欧米との協力は欠かせない。

 ILCについて、政府が方針を明らかにするのは今回が初めてになる。消極的ではない姿勢を示したことを、確かな前進と捉えたい。

 政府が後ろ向きでない証左は、「関心」を表したことで説明できる。もともと今回の見解に期待されたのは、誘致の判断というより「重大な関心」の表明だった。

 国際施設の建設に際しては、誘致を進める国の「重大な関心」がまず求められる。政府の表明は期待ほど強いものではなかったが、欧米の理解が得られれば、政府間の意見交換が始まろう。

 ILCは、約8千億円の建設費と運転費用をどうするかが難題だ。経費は日本と各国で分け合うが、明確な見通しは立っていない。

 日本の学術界の不安も、この一点にある。ILC建設に巨額の費用が投じられると、他分野の研究費が圧迫されかねない。研究者にとっては死活問題と言える。

 だからこそ「国内の科学コミュニティーの理解と支持が大事」と、柴山昌彦文部科学相は繰り返してきた。むろん国内の反発が少ない形での建設実現が望ましい。

 経費については、既に研究者の間で国際的な分担の素案が固まり、政府間協議を始める準備はできている。国と国の交渉が始まれば、実現に大きな一歩となる。

 ILC計画そのものに関しては、日本学術会議も科学的な意義を認めている。政府も同じ認識だろう。経費の問題をクリアして、国民が納得する建設に導きたい。

 かつて政府内の優先順位が高くなかったILCが注目を集めたのは、誘致を目指す地元の熱意もあったからだろう。実現に向けた県民運動の盛り上げがより重要になる。