最近、橋について考えることが多い。川沿いの母方の実家は津波で流失。今、その上に新たな橋の建設が進む。自分の実家も、運河に架かる橋の架け替えで立ち退きが決まり、解体が進む

▼サギやカモが飛び交う運河の原風景は変わらない。だが、窓や壁が取り払われた実家は骸骨のようだった。「復興のため」だから仕方ない。とはいえ、わが一族は「橋とともに去りぬ」という運命なのだろうか

▼そんな話を、宮古市田老出身の友人にしたら「橋のおかげで出会いや別れがあるのは、藤沢周平の『橋ものがたり』のようですね」と予想外の反応。津波で実家も両親も失った友人ならではの感慨かもしれない

▼「橋ものがたり」を読んでみた。江戸の橋を舞台に繰り広げられる悲喜こもごもの短編集だ。「約束」は、5年後の再会を誓い合った幼なじみの男と女の物語。約束の日、男は橋で、いつまでも女を待ち続ける

▼ついに女はやって来たが「合わす顔がない」「ごめんね」と告げ、立ち去ってしまう。翌朝、男は女の家へ。「もう離れちゃいけない」。男は女の苦しみの過去を受け入れる。長い別れ別れの旅が、終わった…

▼5年後の古里はどうなっているだろう。被災地内外の人々が新しい橋を行き交い、新しい物語が始まっているかもしれない。そう考えると橋の下になるのも悪くない。