山田町の陸中山田駅前を歩いていると三陸鉄道の車両が入ってきた。開通に向けた試運転。列車に向かい親子連れが手を振っている。鉄路復活の喜びを感じさせる光景だ。

 駅周辺には東日本大震災の津波被害からの再生を図り、新しく建てられた商業施設が集積する。鉄道駅の復活がもらたす恩恵は大きそうだ。

 同駅はJR山田線宮古-釜石間にある。震災で同区間は広い範囲が被害を受けた。当初、JR東日本からバス高速輸送システム(BRT)での仮復旧が提案されたが、地元の強い要望で鉄路復旧が決定。三鉄に運営移管されて23日、8年ぶりに開通する。

 沿線には駅を拠点に発展し、被災後も駅を核に再生を図るまちが少なくない。県立大宮古短期大学部近くへの新駅設置など、鉄路の恩恵を新たに受ける地域もある。一方で、駅周辺に住んでいた人々が高台などに移転したり、区画整理された住宅地に更地が多く残るなどして、沿線人口の減少も目立つ。

 そんな中、三鉄は移管区間を加え、久慈-盛(大船渡市)間がリアス線としてつながる。全長163キロは第三セクターとして国内最長。経営は厳しいが、沿岸地区の貴重な足となり続ける。

 交通網では、復興支援道路の東北横断自動車道釜石秋田線釜石-花巻間が9日に全線開通する。復興道路の三陸沿岸道路も利用可能な区間が着々と広がる。

 これらの道路により内陸と沿岸を結ぶ時間が短くなり、沿岸各地域間の利便性もアップ。物流効率アップで経済活性化が期待され、医療など暮らしの環境が向上する。

 一方で「副作用」も懸念される。買い物客が都市部や近隣地域に流れることによる商業の地盤沈下だ。既にそれが現れている所がある。

 また、鉄路と道路を走るバスやマイカーは競合する存在だ。しかし、地域発展には共存による相乗効果が求められる。人口減少が進む中で難しい課題だが、取り組んでいかなければならない。

 交通網の効用をいかに高めるか。それは、沿岸全体に人やモノの流入をどれだけ図れるかにかかってこよう。恵まれた自然を生かした観光や、復興の視察、震災学習などといった需要の維持、掘り起こしを不断に行う必要がある。

 鉄路、陸路に加え、宮古-室蘭(北海道)間の定期フェリーが昨年就航し、交通手段は充実した。有機的な活用のためには、各市町村や地域それぞれの努力はもちろん、三陸全体での連携や交流が一層重要になろう。

 魅力的なツアー企画や地場産品を生かした産業振興などに、沿岸広域でのスクラムを強めてほしい。