プレハブ仮設校舎2階の教室に、新聞をめくる音が響く。岡山県倉敷市真備(まび)町の真備(まきび)中(斎藤善紀校長、生徒244人)2年生は、岩手日報社が全国7都市で配布した東日本大震災8年特別号外の岡山版を読み、震災について学ぶとともに西日本豪雨で被災した古里の復興を考えた。

 「真備を取り戻したい。災害を防ぐ-といったところに気をつけて、心に響いた言葉や気になった言葉を一つ選ぶこと」

 高橋恵子教諭(55)の呼び掛けで、前の時間に震災の概要を学んだ生徒たちは一枚一枚新聞を広げ、キーセンテンスに印を付けた。

▽エールは励み

 選んだ記事は、宮古高と札幌山の手高ラグビー部の交流や毎月月命日に東北の食を提供する京都市の「きっかけ食堂」、山津波や大洪水を伝える碑、岩手の現状紹介、鵜住居(うのすまい)小児童のメッセージなどさまざま。

 ラグビー交流の記事を選んだ竹下佳希さんは「被災地同士の絆やスポーツの力を感じる。全国から届くエールは励みになる」とし、真備地区の水害を伝える古い碑を選んだ定守悠斗さんは「自分の地域が、かつて大洪水に遭ったとは知らなかった」と関心を高めた。

㊤真備東中校庭のプレハブ校舎、㊦西日本豪雨で被災した真備中校舎

 きっかけ食堂や七夕ボランティア、岩手の復興状況を伝える記事に山下華香(はるか)さん、片岡晃政(こうせい)さん、浅野加有見(かすみ)さんは「真備名産のタケノコを振る舞うイベントを開き、この地を思い出してほしい」と願い、「震災でまだ苦しい思いをしているのに私たちを応援してくれる人々がいる」と感謝した。

▽地域の参考に

 ほかにも「古里を忘れないため、被災地に思いを寄せるために、支援につながる小さなきっかけづくりが大切なことを学んだ」「悩みや思いを話せる場の整備は真備の参考になる」「各地の碑は、予想を超える災害の可能性を伝え風化を防ぐ。歴史の再認識が大事」「東日本大震災の大きさを知り、一日一日大切にしたいと思った」など、一人一人が震災から学び、被災地の思いを共有。地元の復興と結びつけて考えた。

 高梁(たかはし)川の支流・小田川の堤防決壊で被災した真備中周辺を訪れた。窓のない家屋が並び、修理している家の横で解体作業が続く。学校周辺に建てられた新しい家々も被災。ガラス窓が割れたままの住まいもある。

 2階まで浸水した校舎には、以前の洪水の水位を示すオレンジ色のライン。昨年3月、水害への注意を喚起しようと地域住民が引いたもので今回もほぼ同じ高さまで浸水した。「あそこまで水が来る」と家族に呼び掛け避難した生徒もいるという。

 当時の惨状を残す教室をのぞくと、黒板には校舎に別れを告げる3年生のメッセージが書かれていた。「3Aありがとう」「真備中大好き」。西日本豪雨から8カ月余。真備の復興は緒に就いたばかりだった。


高橋恵子教諭に聞く 再興に向けた第一歩

 東日本大震災8年特別号外を授業で取り上げた狙いや新聞活用の意義について、NIEアドバイザーも務める高橋恵子教諭に聞く。

(聞き手 読者センター・礒崎真澄)

 -授業で号外を使った。

 「東日本大震災の発生当時、子どもたちはまだ幼く、震災の記憶がない。とてつもない大災害で、いまだに行方不明者がいて、8年たっても復興が完結していないことを生で学ぶ機会と考えた。災害復興には時間がかかる一方で、多くの人の助けがあり、人々が協力し合って前に進むことに気付いてほしかった。日常あまり考えないことを真備に落とし、自分のことに立ち返らせる。古里再興に向けた第一歩だ。時間はかかるが、みんな応援してくれる。だから頑張ろうという気持ちにさせたかった」

 「西日本豪雨後、岩手、宮城、福島や熊本、長野など被災地からの支援が早かった。同じ痛みを知っているからこそ、早急な支援をしてくれたことにも気付かせたかった。記事に詰め込まれた地元新聞社・岩手日報の思いや考えは、子どもたちの心にも届いていたようだ。号外は、私たちにとっても同じ思いを共有し前に進む力になったと感謝している」

 -生徒の選んだ記事や話し合いの様子から感じたことは。

 「被災者が悩みを話せる環境を整備する広島の取り組みに共感したり、碑を作ることで防災意識を高めようと考えるなど、子どもたちはそれぞれ古里の復興や災害を繰り返さない大切さに気付いていた。国語とは別の意味で、『古里で生きていく礎』を築けたと感じる」

 -新聞を使う有効性は。

 「見出し、要約、本文と整理された書き方は、読み手を意識した文章。読んでいるうちに『どういう書き方が分かりやすい書き方か』との第三者的な視点が養われる。また、災害に関する情報に関しては、教科書は古く、地元の情報もない。NIE全国大会で見た大槌学園の児童生徒が岩手日報の記事で地域の人々と触れ合ったように、地元紙の教育に果たす役割は大きい」