東日本大震災からの復旧・復興、小中一貫教育の導入など全国から注目される教育施策を推し進めた大槌町の伊藤正治教育長(70)=同町大槌=が30日、退任する。津波にのまれながら生き残った者として、児童生徒の学びの充実を使命にフル回転。被災した学校の学習環境を整え、義務教育学校を設置し、町独自の郷土学習「ふるさと科」も導入した。町の未来を担う人材育成を後進に託しつつ、ボランティアとして子どもたちに関わり続けるつもりだ。

 25日、離任式が行われた大槌学園を訪れた伊藤教育長を児童が囲む。町の復興教育の拠点の一つとして2016年にできた校舎前。好きな食べ物の話題ですぐに子どもたちの心をつかみ、笑顔の輪が広がった。

 3期11年教育長を務めたが、11年の震災で取り巻く状況は大きく変わった。今月上旬に解体が終わった旧役場庁舎内で津波に2階天井裏へ押し上げられ、奇跡的に一命を取り留めた。

 直後に抱いたのは「学びの空白は一生に影響する」との危機感だった。授業スペースを確保するため、学校などで避難所生活を送っていた住民に頭を下げて回った。環境が整わない中で目に入ったのは、ランドセルを背負い授業に向かう児童の姿。「復興へ一番先に歩みだしたのは子どもたちだったのかもしれない」。震災から半年後には合同仮設校舎開設にこぎ着けた。