東京圏から岩手など地方へ移り住む人に、最大100万円を支給する。移住した地で起業すると、さらに200万円上乗せされる。

 U・Iターンを促し、地方を担ってもらう国の事業が新年度に始まる。人手不足が深刻な地方へ、東京から人の流れをつくる狙いがある。

 これに伴い本県は、新年度に100人移住の目標を掲げた。以後は年間150人程度の利用を見込む。移住支援金のうち県や市町村も4分の1ずつを負担する。

 個人への高額な補助金は異例と言えるが、効果に注目したい。本格的な行政の移住支援を機に、「東京から地方へ」の流れを確かなものにしなければならない。

 かつてない施策を政府が打ち出す背景には、止まらぬ東京一極集中がある。集中是正を唱えるにもかかわらず、昨年は東京圏への転入が1万4千人余も増えた。

 逆に岩手は、入る人より出る人が多い「転出超」が5千人に上った。人口減が一段と進み、企業の人手不足に拍車がかかっている。

 国と自治体が歩調を合わせ、総合的な移住支援につなげる必要がある。生活の糧を得るための働く場から、その後の暮らしのサポートまで、切れ目なく支えたい。

 U・Iターンする場合、何より仕事探しが必要になる。移住支援金は中小企業への就職が条件だが、自らの得意分野を生かせる会社の情報はなかなか得られない。

 これまで以上に行政によるマッチングの重要性が増す。県は、移住を望む人と地元企業をつなぐサイトを充実させるが、一人一人に合うきめ細かな対応が望まれる。

 東京一極集中の中でも、転出を転入が上回る「社会増」に成功した地域は少なくない。2015年までの5年間で、全国の市区町村の25%が社会増を達成した。

 地理や産業に恵まれていない所も、子育て環境や住まいの整備、創業支援など懸命な努力をしている。移住者の獲得は、自治体の政策で差が開く時代になった。

 県内では、例えば遠野市が社会増を実現した。移住者を応援する組織をつくり、情報をワンストップで提供している。陸前高田市でもNPOが移住を後押しする。

 せっかく移住しても、悩みを抱えて去ってしまう人が全国的には多い。住んだ後の手助けは不可欠だ。定着してもらうには暮らしの支援を続けるとともに、人との出会いとつながりが大切になる。

 石川県七尾市では、移住者に安心して暮らしてもらうため地元住民が交流会を開いたり、生活相談にも乗る。人と人をつなぐ場を住民と行政で整えることも必要だろう。