釜石市鵜住居(うのすまい)町の介護福祉士鹿野正治さん(60)は、女形を演じて被災者や高齢者を元気づけている。東日本大震災の津波で被災したが、昨年ようやく自宅を再建。つらいときに自分の支えになった舞踊で、次は誰かを励ましたいと思いを込めて舞う。

 鹿野さんは仕事の傍ら毎月、人前で踊りを披露している。多いときは月5回ほどで、10日は所長を務める同市平田のデイサービスセンター善の地域交流イベントで女形舞踊を披露。約60人を前に「花は咲く」など3曲を華麗に踊り、会場は笑顔や歓声に包まれた。

 8年前の3月11日、同市で舞踊の稽古中に大きな揺れに襲われた。鵜住居町の自宅に急いで帰宅し、妻と逃げようとした時、家が底から持ち上げられる感覚があった。

 衝撃的な体験は心に大きな傷を残した。しかし周囲の支えもあり「自分には踊りがある」と前を向いた。被災地に限らず、どこにでも足を運び「2回目になると『おかえり』と言ってくれる人もいる。笑って楽しんでくれることが何よりの喜び」と実感を込める。