大きなイチゴのハウスは、最新の情報通信技術(ICT)で管理されている。遠くにいても温度や水分量、土の様子が端末で分かり、自動的に良い状態を保つ。

 陸前高田市横田町の34歳、松田俊一さんはICT農業の実践者だ。脱サラして地元に戻り、イチゴ一本で徹底的な効率経営を行う。

 今年1月、市内の若手農業者に松田さんが呼び掛けて「陸前高田 食と農の森」を結成した。販路や流通のルートをつくろうと、8人で勉強会を続ける。

 「一人よりは皆の力。長く営農するために、横のつながりをつくりたい」。若手農業者たちの視線は、地域の将来にも向けられる。

 復興が進む被災地で最大の課題は、産業と働く場をどうつくるか。基幹の農林漁業を営む人の減少は著しい。陸前高田の農家数は、震災前より4割近くも減った。

 一方、外から入りイチゴやトマト、野菜作りを志す若者は意外にも少なくない。岩手の沿岸は日照に恵まれ、夏涼しく冬は暖かい。園芸に向いた土地の潜在力に魅力を感じているからだ。

 だが、個々の生産規模はまだ小さい。出荷が少ないと、流通に乗りにくい弱点がある。それを打開する可能性を、松田さんらは「束」の力で探ろうとしている。

 「将来的には地域の生産者が増える仕組みをつくりたい」。ゆくゆくは農業の会社を設立し、多くの雇用を目指すメンバーもいる。

 一人一人、一つ一つの経営体の力は決して大きくない。それでも「束」になることで、産業としての足腰が強まる。地域全体に輪を広げられれば、産地ができる。

 若手リーダーによる連携の試みは、水産業で既に活発化した。宮城、福島県の仲間とも手を携え、組織をつくり三陸ブランドの確立を目指す。企業の壁を取り払い、県境も越えた取り組みだ。

 こうした「束」の効果は1次産業にとどまらない。商工業との連携が進めば他産業に刺激を与えよう。農林漁業者が加工、販売に挑むきっかけづくりにもなる。

 岩手の沿岸は、大きな消費地に遠いことが難点とされてきた。しかし仙台などが近づく復興道路・支援道路網を生かせば、不利な条件が一変する可能性が高まる。

 農業の場合、産地化やブランドづくりには組織的な生産、出荷が望ましい。行政や研究機関の手助けがより重要になる。若手のリーダーもさらに増やしたい。

 被災地では、官民で産業人材を育てる取り組みが行われてきた。復興まちづくりのためにも、人材育成のたゆみない努力を続ける必要がある。