太平洋戦争と女性の関わりを考察した「銃後史ノート」など、女性史研究のパイオニアとして知られる加納実紀代さん。2月末、亡くなったとの報に接し、メールのやり取りを読み返した

▼「先輩女性の苦闘を、若い世代に伝えたい」。戦後、女性たちが戦争と平和、民主主義などについてどう考え、自らのものにしていったか。その軌跡をしっかり残したいという熱意が、いつも文面に満ちていた

▼女性たちが思いをつづり、手作りで刊行した文集(ミニコミ)は今、散逸が進む。加納さんらはインターネット上に「電子図書館」を開設し、そこに各地のミニコミを掲載し公開する取り組みに力を入れてきた

▼「(収録するミニコミが)どうしても東京中心の大きな団体のものになりがち。そうした中で『むぎ』は貴重です」。一戸町出身の一条ふみさんが主宰した「むぎ」など、岩手は各地で盛んに文集が刊行された

▼女性史研究で、新たな潮流が生まれている。きっかけは、花巻市出身の若手研究者柳原恵さん著「〈化外(けがい)〉のフェミニズム 岩手・麗(うら)ら舎読書会の〈おなご〉たち」。中央の主導ではない、地方の女性運動の独自性を考察し、第13回女性史学賞に輝いた

▼岩手、地方の女性たちの地道な歩みを、あらためて見つめ直すことで、加納さんの思いを受け継ぎたい。歴史は足元にある。