国内の景気拡大が、先月で6年2カ月に達した。政府の判断では、高度成長期やバブル景気、2000年代の好況期を超えて戦後最長になったとみられる。

 12年12月に始まった今回の景気拡大は、同時に発足した第2次安倍政権の歩みと重なる。政府は、安倍晋三首相の経済政策アベノミクスの成果を強調している。

 この期間を振り返れば、前の民主党政権を悩ませた円高から円安に転換したことが大きい。大手輸出企業を中心に業績が改善した。

 それに伴い株価が上がり、企業心理が変わって設備投資も上向いた。物価が下がり続けるデフレからは、完全ではないが抜け出した。

 景気の局面を変えた円安がアベノミクスの一つ、金融政策によることは疑いない。世界経済の拡大という幸運にも恵まれたとはいえ、率直な評価が必要だろう。

 企業活動は確かに活発化したが、真に評価すべきは、6年で人々の暮らしが良くなったかにある。この点について「戦後最長景気」と胸を張っては言えない。

 今回の景気拡大は、2000年代の拡大期と同様「実感がない」との評価が付きまとう。給料が毎年増え、消費が伸びた高度成長期やバブル期とは明らかに異なる。

 それを裏付けるように期間中の実質成長率は1・2%にとどまり、バブル期の5・3%と比ぶべくもない。消費はほぼ横ばいで、人々の節約志向は変わらない。

 背景に、企業が稼ぎを増やしても人件費に回さない「労働分配率」の歴史的低さが挙げられる。賃金の伸びが鈍い上、給料から引かれる社会保険料の負担も重く、消費を楽しむ余裕が乏しい。

 アベノミクスで賃金は上がったのか。まさに今、国会論戦の焦点に浮上した。統計不正を巡り、野党は実質賃金の伸びが実はマイナスだったと政府を追及している。

 これに安倍首相は、働く人が増えたことで「総雇用者所得」は高まったと反論する。女性や高齢者が働くようになり、家計全体は潤っているとの認識だろう。

 首相の言うように総雇用者所得が増えたのは確かだが、それには地域差がある。例えば岩手の場合、雇用者所得の前年割れが続く。

 首都圏に比べて地方は賃金があまり上がらず、非正規をはじめ収入が低い働き手も多い。よって「戦後最長景気」など実感できない。その証左とみられる。

 首相は景気回復を「全国津々浦々に届ける」と宣言したが、道半ばのままだ。地方の実感を上げるには、企業移転など成果の出ない地方創生に本気を示さねばならない。