春闘がスタートした。賃上げ、労働条件改善に真剣な協議を望みたい。地方としては中央、大手との格差是正をどう図るかが焦点となる。

 今年は昨年と様相が違う中での攻防となりそうだ。春闘はこの5年間、政府が賃上げを要請する「官製」が特徴的だった。特に昨年は安倍晋三首相が3%という具体的な数値を挙げて賃上げを求めた。

 本来賃金は労使自治であり、「官製春闘」には労使双方から異論が出た。ただ、結果的に基本給を底上げするベースアップ(ベア)につながった面は否定できない。

 しかし今回、首相は賃上げを要請しても具体的な数字は挙げなかった。「官製脱却」姿勢を示した経済界に配慮したとみられる。そんな中で中西宏明経団連会長は「多様な方法による年収ベースの引き上げ」の検討を求め、ベア偏重の交渉をけん制する。

 一方、連合はベア要求を掲げつつ、具体的な月給の目標額を定める「水準方式」も重視する。一律のベア目標だと大手と中小の格差是正が図られないため、到達水準の指標を提示し、それを参考に要求を組み立てる方式だ。

 ベアについては昨年、波紋を呼んだ一件があった。けん引役のトヨタ自動車が、ベアが過度に意識される状況を変えるとしてベア妥結額を非公表にした。そして今春闘では労組側が要求にベアの具体額を盛り込まない。

 今後、各企業でもベア重視が薄れ、年収ベースが強まるのだろうか。だが、着実な賃上げ継続にベアは重要だ。労働側は留意すべきだろう。

 労働側が意識する格差是正では、中小企業を多く抱える地方の動向が鍵を握る。

 連合岩手の昨年の賃上げ実績は、大手を含めた全体が1・95%、5006円。組合員300人未満の地場・中小だけで見ると1・98%、4731円だった。人材確保の必要性を強く迫られた地場・中小が賃上げ率で健闘したが、大手との格差は縮まっていないと言える。

 今春闘ではベア2%相当分に定期昇給分などを加え、4・44%、1万500円の要求目安を掲げた。連合岩手は「景気は悪くない」と期待するが、経営側には米中貿易摩擦の影響などを懸念する声があり、厳しい交渉も予想される。底上げ、格差是正を図るために、労働側には説得力と粘り強さが問われる。

 関連法が順次施行される働き方改革への対応も重要だ。大企業では残業時間の罰則付き上限規制が今春、同一労働同一賃金が来春始まる。

 この二つに関して中小企業は1年遅れの適用となる。中小企業の労使は猶予期間を生かし、業務改善などについてしっかり話し合いたい。