トランプ米大統領が、北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長との2度目の米朝首脳会談を27、28両日、ベトナムで開催すると発表した。

 朝鮮半島の非核化に進展が期待される一方で、気になるのは、これに先だってトランプ氏がロシアとの間で結ぶ中距離核戦力(INF)廃棄条約の破棄を通告したことだ。

 これを受け、ロシアのプーチン大統領は米国が欧州に配備した迎撃システムこそ違反として、同条約の義務履行の停止を表明している。

 北朝鮮はかねて、日本を射程に収める中距離弾道ミサイルの廃棄に消極的とされる。廃棄条約の破棄により米ロを中心に軍拡が進む事態を想定すれば、なおさら廃棄を渋る可能性がある。来年の大統領選をにらんで自国第一主義が際立つトランプ氏が、米本土に脅威が及ばないことを是として「取引」に応じる懸念がないとは言えまい。

 昨秋の条約破棄方針の表明は、欧州の同盟国にも唐突だったという。今回の米朝首脳再会談が、日本の立場を含め相応の成算とともに行われることを願いたい。

 INF廃棄条約は、破棄通告から6カ月後に失効する。それまでの間、米ロは交渉を続ける方針だが、見通しは暗いのが現状。いよいよ失効となれば、米国は欧州とともにアジア太平洋地域でも短・中距離ミサイル配備を拡大するのは確実だ。

 米国の「真の標的」は、この条約に縛られずミサイル戦力を増強し続ける中国とみられている。米国の対中戦略の中で、日本の「軍事拠点」としての役割が増すことは想像に難くない。

 米ロ両国は、2010年に調印した新戦略兵器削減条約(新START)の更新交渉も控えている。同条約は21年2月に失効するが、このままでは相互不信が軍拡をあおる悪夢が現実味を増す。

 トランプ氏は、核保有国を網羅する新たな多国間条約を望むと言うが、現時点では空論と言わざるを得まい。むしろ米ロ両国が、冷戦終結の契機になったと言われる歴史的条約の理念を共有する中で、中国など保有各国を核軍縮の流れに引き込むのが現実的ではないだろうか。

 6月には、大阪市で20カ国・地域(G20)首脳会合が開かれる。核軍縮を巡り、日本は唯一の被爆国として国際社会から相応の役割が期待されている現実もある。

 被爆地からは、この機会にトランプ氏の被爆地訪問を期待する声も上がる。今や主要国で、米中ロの指導者と緊密な関係を持つ唯一のトップである安倍晋三首相には、その立ち位置を生かして関係国を軍縮対話のテーブルに促す先導役を担ってもらいたい。