「みんな、逃げろー」「高い所に上れ、もっと上に」「津波が来るぞ!」

 ステージに並ぶ児童の呼び掛けから始まった、山田町・船越小の発表。盛岡市内で開かれた復興教育実践発表会(県教委主催)の一場面だ。

 3~6年生の90人は、東日本大震災で被害を受けた学校や地域の様子、そして人々の心の葛藤を、映像を交えながら語った。復興への思いを込めて卒業生が作詞した「明日へ」を合唱。「自分の命を自分で守るために勉強していく」と結んだ。

 児童生徒による実践発表会は初めての試み。小中高校、特別支援学校の計8校が、日頃の学習活動を披露した。広く県民に参観を呼び掛け、本県の復興教育を知ってもらう狙いもある。いずれの学校も成長段階や地域の実情に応じた学びの一端を表現力豊かに発信した。

 小中一貫の大槌学園は9年生4人が登壇。大槌町独自のふるさと科での学習などを通して「地域の温かさに支えてもらっている。小さな声かもしれないが、私たち学生の声が届く可能性のある町」と感謝し「後輩に思いをつなぎたい」と力を込めた。

 あの日から間もなく8年。幼くて記憶がなかったり、時を経て薄れてきたり。教訓を語り継ぎ、古里の復興と発展を支える人づくりをどうしていくのか。未来の命をどう守るのか。子どもも教員も、震災を知らない世代が増えていく。

 2011年度に始まった本県の復興教育は「生きる・関わる・備える」の三つの価値を、全ての教育活動を通じて育む。各学校で丁寧に積み重ねられてきた実践は、主体的・対話的で深い学びを体現する姿とも重なる。新学習指導要領を先取りする形で取り組まれてきたといえよう。

 また、社会に開かれた教育課程として、防災教育やキャリア教育など多彩な活動を通じて、地域の住民や企業などとの連携も図られている。

 地域とともにある学校づくりを目指し、保護者や住民の声を学校運営に反映させるコミュニティースクール(地域運営学校)が徐々に広がる。

 被災地だけでなく、人口減少が進む多くの地方にあってまちづくりの拠点として期待されるのが学校だ。目標や課題、成果を地域と共有し、協働する仕組みが一層求められていくだろう。

 震災の記憶はいや応なく風化する。一方で、各地で災害が頻発する。経験から生き方を学び、教訓を伝え続けることはあらゆる場面で必要だ。

 地域は、学校のパートナーとして子どもの豊かな成長を支え合う存在へ。本県ならではの創意工夫に満ちた復興教育を深化させたい。