千葉県野田市の小学4年の女児が自宅浴室で死亡し、父親が傷害容疑で逮捕された事件は、関係機関の虐待対応のずさんさを浮き彫りにした。「大人の信頼」そのものが問われる事態だ。

 自らSOSを出すのが難しい子どもの異変をどう早期に察知し対処するか。虐待対応は難しい。ところが今回は、女児が学校のアンケートに「お父さんにぼう力を受けています。…先生、どうにかできませんか」と記すなど、明確にSOSを出していた。

 女児の絶望の深さは、想像を絶する。関係機関が救うチャンスをみすみす逃したことが、最悪の結果を招いた。

 今回の事件をめぐっては4日、千葉県警が母親も傷害容疑で逮捕した。夫の暴行を制止しなかったことが、共謀に当たると判断したという。

 ただ、一家が野田市に転居する前の沖縄県糸満市在住当時、母親が夫からドメスティック・バイオレンス(DV)を受けていると、親族から市に相談が寄せられていた。その対応が最初のポイントだったのではないか。

 近年、全国の児童相談所(児相)の虐待対応件数が急増している。背景には、配偶者に対する暴力を目の当たりにした子どもがストレスを受ける「面前DV」が心理的虐待として認知されてきたことがある。

 市は、相談を受けた際、面前DVの可能性をきちんと認識していたのか。詳細な検証が求められる。

 野田市に転居後、女児はアンケートにSOSを記したが、市教委は父親の「威圧的態度」に屈し、コピーを渡した。決定的だった。渡すことで父親の虐待が加速するリスクに思いが至らなかった。

 しかも、渡したことが関係機関の会議で論議されず、児相は親族宅に身を寄せていた女児を自宅に戻すと決めた。その後、女児は学校を長期欠席したが、家庭訪問もしないまま、悲劇は起きた。

 虐待のリスクを把握し、危機介入を判断する専門性の低さ。「命を守る」という関係機関の使命感の弱さと、連携の乏しさ。浮かび上がった課題は根本的なことばかりだ。

 学校現場では今、子どもたちが命の危機に際し、誰にどう助けを求めるかを学ぶ「SOSの出し方教育」が取り組まれるようになってきた。だがそもそも、大人がSOSを受け止めなければ、出しても意味がない。

 関係機関に社会福祉専門職の配置を充実させ、事例検討会を重ねるなど、大人が「SOSの受け方」を学ぶ取り組みが急務だ。虐待を受け救いを求めている子どもが「どうせ大人は対応してくれない」と諦めてしまうなら、ますます虐待は密室化する。