この時季に吹く風を、詩人の中原中也は金や銀に例えた。〈けふ一日(ひとひ)また金の風/大きい風には銀の鈴/けふ一日また金の風〉。「早春の風」という詩にある

▼〈女王の冠さながらに/卓の前には腰を掛け/かびろき窓にむかひます〉〈鳶色(とびいろ)の土かをるれば/物干竿は空に往き/登る坂道なごめども〉…。ともかくも、厳しい冬が過ぎて、春を迎えた心の弾みが伝わる

▼立春のきのう、岩手は暖かく強い春の風が吹いた。列島の寒さも緩み、北陸は過去最も早い春一番だったという。週間予報を見れば厳冬の冷え込みは戻るけれど、少しずつ「金の風」が吹く日も増えてこよう

▼立春の頃といえば東風だが、今年の岩手は西から風が吹いてくるらしい。きょう旧正月の春節を迎えた。大型連休に入った中国では、700万人が海外旅行に出かける。人気の日本に西から人々が大移動してくる

▼折しも花巻空港と上海が定期便で結ばれた。早春の岩手に観光客が大勢訪れる。スキーや温泉だけでなく、金色堂に銀河鉄道、おいしい米「金色の風」「銀河のしずく」がある。当地の金銀を満喫してもらいたい

▼〈外吹く風は金の風/大きい風には銀の鈴/けふ一日また金の風〉。花巻-上海便は、こちらからの旅行客が少ないのが課題という。交流のためには外に吹かせる風、岩手から東風も吹かせたい。