メキシコ国境の壁建設費を含まないつなぎ予算が成立し、米連邦政府機関の一部閉鎖が一時解除された。トランプ大統領が不法移民を防ぐとして公約した壁を巡り、反対する民主党との溝は深い

▼巨大な遮蔽(しゃへい)物は古来から各地で築かれてきた。中国の万里の長城、英国のハドリアヌスの壁などは異民族の侵入を防ぐためだった。中世ヨーロッパでは都市を城壁で囲んで防御した

▼現代では、インドとパキスタン、イスラエルとパレスチナ自治区-と紛争には壁がつきものだ。今年は、冷戦時代に東西ドイツを分断したベルリンの壁が崩壊した1989年から30年になる

▼今は、独裁政権が自由を求める人々を閉じ込めた壁よりも、貧困から逃れようとする人々を封じ込める壁やフェンスが注目を集める。隣り合う国が「壁を築くことは、政治が正常に機能しなくなっている証拠」(エトガー・ヴォルフルム著「ベルリンの壁」)とも言える

▼日本でも最近話題になった覆面芸術家バンクシーはイスラエルの治安部隊に銃を向けられながらも、パレスチナの分離壁に、壁に穴を開ける子どもの絵などを残した

▼もしも米国・メキシコ国境に壁が建設されたら、芸術家はそこに何を描くだろう。不法移民、国境紛争はどちらが正しいと簡単に決められない。心に壁をつくらず冷静に判断することが必要だ。