新聞配備、道半ば 地財措置の有効活用を

 岩手日報社のNIE県内全校アンケートで、国の地方財政措置で配備される新聞数(小学校1紙、中学校2紙、高校4紙)に満たない高校が44%とほぼ半数に上り、小中、特別支援学校でも「配備なし」が3~13%に上った。新聞を活用しない理由として「新聞確保」を挙げる回答も多い。主権者教育の充実などの観点から地財措置されており、児童生徒が複数の新聞を手に取れる環境整備が求められる。

 国の地財措置は2017年度からの「学校図書館図書整備等5カ年計画」で、公立の学校図書館への新聞配備経費を倍増し単年度約30億円措置している。特徴は、主権者教育の普及に必要な高校への新聞配備とされる。

 調査結果をみると、「児童生徒の読める新聞は何紙配備しているか」の設問に、高校は、私立も含め1紙5%、2紙9%、3紙30%で、地財措置される4紙未満が44%に上る。また、中学校は2紙分措置されているはずだが「配備なし」9%のほか1紙が46%を占めた。高校で4紙以上、中学校で2紙以上と答えた学校でもPTAや地域の補助などで賄っているケースがあり、地財措置の意図が各自治体に十分理解されているか疑問の残る結果となった。

 今回のアンケートでは、学力向上を実感する学校が多数を占めた。主権者教育や消費者教育には、さまざまな主張の比較やタイムリーな情報が効果的で、学習の充実に向け地財措置の有効活用が望まれる。

高齢者宅の新聞活用 宮崎県高千穂町

読み終えた地元紙を手渡し談笑する佐藤哲士さんと佐藤優一君=宮崎県高千穂町

 「面白い記事があったぞ」

 「いつも新聞ありがとう」

 国の重要無形民俗文化財「高千穂の夜神楽」で有名な宮崎県高千穂町。高齢者世帯の玄関で小学生が地元紙・宮崎日日新聞を受け取る。

 同町上野(かみの)小の田崎香織教諭(48)が前任の高千穂小時代から始めた児童が高齢者宅を訪問し読み終えた新聞を譲り受ける取り組みだ。

 新聞を手渡す佐藤哲士さん(74)は「子どもと話ができて楽しい。しっかり読んで社会を学んでほしい」と笑顔をみせ、佐藤さん宅の隣に住む5年生の佐藤優一君は「新聞は、いろんなことが書いてあって好き。ちゃんと勉強に生かしたい」と受け取った。

 NIEアドバイザーも務める田崎教諭が、活動を思い立ったのは3年ほど前。クラスの購読家庭が3割程度で、新聞スクラップの材料集めに悩んだ時だった。町人口の65歳以上の割合は約4割。高齢者世帯や1人暮らしも多く、児童の家庭は核家族化が進む。地域のつながりが薄れるのを感じ、「新聞を通じた地域の世代間交流」を考えた。

 当初は、高齢者を元気づける狙いだったが、結果的に元気をもらったのは児童だった。帰宅後、一人きりだった児童は、学校生活や新聞記事を話題にお年寄りとおしゃべり。新聞を渡す、受け取る関係から交流が生まれた。

 教え子の中には、近所の1人暮らし高齢者を訪ね続けたことが縁で、互いの健康まで気遣う間柄になり、卒業後も行き来する中学生もいるという。

 田崎教諭は「新聞は学力向上のための道具の一つと考えていた。だが今は、世代間の心と心をつなぎ、生きる力を蓄えると思える」とした上で、スクラップの継続で、表現力、思考力、判断力が向上する点を指摘。「新聞は、全員同じでなくてもいい。たくさんの情報から選び、要約し感想を書くことが目的」と強調する。

 NIEアンケートでは、新聞を活用しない理由として「新聞確保の難しさ」を挙げる回答も多かった。田崎教諭の取り組みに、NIEアドバイザーの長根いずみ仙北中教諭は「高齢者世帯が増え世代間の交流が少なくなる中、手本になる活動」と評価。「高齢者と子どもたちがスクラップで触れ合う場も有効だ」と説く。


 【NIE県内全校アンケート】県内の小中高、義務教育学校、特別支援学校全573校を対象に、2018年度のNIE実施状況などについて聞いた。回答率は95%。義務教育学校は前期(1~6年)を小学校、後期(7~9年)を中学校として集計した。