「#Thank You From KAMAISHI」は、ラグビーW杯など三陸・釜石地域にとって特別なイベントが満載の2019年に、東日本大震災の支援に対する「ありがとう」の気持ちを世界に発信する活動。三陸鉄道リアス線の全線開通(3月23日)が間近に迫り、県内では盛り上げの機運が高まっている。釜石市・鵜住居駅の装飾などに取り組む同市の釜石東中の動きを中心に紹介する。

「多くの人見てほしい」 消しゴムはんこ押して描く

「すべてを包み込む母なる海」をテーマに虎舞や海を表現したチーム。力を合わせてデザインを完成させた

 鵜住居駅を見下ろす高台にある釜石東中(佐々木賢治校長、生徒117人)は、本年度、スマイルとうほくプロジェクト(岩手日報社など主催、花王特別協賛)の一環として、三陸鉄道の▽ラッピング車両▽鵜住居駅の愛称看板▽同駅の壁面装飾-の3つのデザインに取り組んできた。

 リアス線開通を約1カ月後に控えた今月20日、1、2年生70人は、駅舎の壁面デザインの授業に臨んだ。

 

ラグビーボール型の「消しゴムはんこ」で虎舞を描く生徒

 壁面装飾は縦約1・8メートル、横約1メートルの8枚のパネルに生徒が絵を描き、後日、駅舎に取り付ける。デザインテーマは2つ。ラグビーW杯会場となる釜石鵜住居復興スタジアム側の4枚は「すべてを包み込む母なる海」、学校側の4枚は「パッと見てハッピーになれる駅」。絵を描くのに使う道具は、生徒が手作りしたラグビーボール型の「消しゴムはんこ」だ。

 講師の椎木一郎・花王パッケージ作成部F&HC部長は「構図や色彩を考えながら描いて」とアドバイス。生徒たちは班ごとに役割分担し、消しゴムはんこを押して虎舞、花、海の生き物などのモチーフを描いた。

3年生の教室では「トライステーション」の愛称看板がお披露目され、完成を喜んだ

 生徒は自分たちの絵が駅舎を飾ることを想像しながら集中して作業し、2時間の授業で8枚のパネルが完成。小笠原瑠逢(るあ)さん(2年)は「みんなできれいな絵にしようと、配色や配置を考えた」、川崎真菜さん(2年)は「満開の桜をイメージして描いた。たくさんの人に見てもらい、『いいまちだな』と思ってほしい」と声を弾ませた。

 また、同日は3年生が昨年制作した2枚の駅名看板(愛称・トライステーション)のデザインも披露された。看板と壁面パネルは、3月23日のリアス線開業までに駅舎に取り付ける。

釜石東中の生徒がデザインした看板と壁面パネルが取り付けられる鵜住居駅

 24日には全校生徒でデザインしたラッピング車両もデビュー。鵜住居駅に車両が停車すると、同校が制作した3つのデザインがそろう。同日は「駅びらき」イベントも予定されている。

 椎木部長は「授業では、生徒一人一人の『感謝を伝えたい』という思いが重なり、発信力が強まっていったように感じた。多くの人に生徒たちの気持ちが届けば、お手伝いした私たちもうれしい」と期待した。

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「三鉄愛」 店にミニ車両 釜石出身、盛岡で居酒屋・伊勢央さん

「食を通じて内陸と沿岸をつないでいきたい」と語る伊勢央さん

 盛岡市八幡町の路地裏にある「居酒家 里伊(さい)」。店内に入ると、カウンター席の頭上を一直線に走る「ミニ三鉄」が目にとまる。

 店主の伊勢央(ちから)さん(39)は「いつか三鉄をお店に走らせたいとずっと思ってたんですよ」とほほえむ。

 伊勢さんは東日本大震災で大きな被害を受けた釜石市片岸町の出身。幼い頃から三陸鉄道は身近で愛着のある存在だった。店内も三鉄グッズや赤青白の三鉄カラーで彩られている。伊勢さんの三鉄への思いを知った客が縁をつなぎ、今年4月、三鉄が車両の鉄道模型を寄贈した。

 中学卒業後、盛岡に出て料理の修業を始めた。震災が起きるまで、いつの間にか地元は疎遠になっていた。

 そんな時に起きた大震災。久しぶりに見た古里は変わり果てていた。すぐに知り合いに物資を届けるなど奔走した。「震災をきっかけにつながりが戻った」と振り返る。

カウンター席上を走る「ミニ三鉄」

 震災直後は「あいつのために」という個人的な気持ちで始めた支援は、だんだんと幅を広げ、今では内陸の出店者を連れて釜石市でイベントを開催するなど、精力的に地域活性化に取り組む。

 自身も震災関連死で母を亡くした。地元を離れたからこそ、分かった古里への思いがあった。

 2015年に「内陸と沿岸をつなぐお店を作りたい」と里伊をオープン。車いすで列車に乗る際に使用する木製スロープを活用したテーブルは、訪れる客に三鉄カラーのペンで夢や絵などを好きに書いてもらってきた。今年で開店から4年目を迎えるが、テーブルは熱いメッセージでいっぱいだ。「だんだんと内陸と沿岸をつなぐ縁が密になってきたってことかな」と笑顔を見せる。

 全線開通の3月23、24日は釜石市で三鉄のイベントに出店する。6月には車両を貸し切り、内陸出身者に呼び掛け、三陸をたっぷりと味わってもらう予定だ。

 「内陸と沿岸をつなぐ三鉄は、店のコンセプトと同じだ。これからも食を通じて内陸と沿岸をつないでいきたい」と意気込む。