久慈地域はおいしいものが多い。素材の魅力を何倍にも生かして調理してくれるお店もたくさん。普代村の上神田精肉店もその一つだ。地元特産の昆布が入った特製たれは絶品で、村内外にファンが多い。

 しかし同店の魅力は味に加えてそのサービス。従業員の金子恵美子さん(48)が月1度、仮装して接客するのだ。きっかけは、数年前に宣告された乳がん。手術で切除したが、肺への転移が見つかり現在も治療している。

 今月はバレンタインデーの仮装ということで、取材にお伺いした。カラフルな衣装をまとったキューピッド姿はインパクト抜群。おもちゃのステッキを振って、恋愛成就の魔法をかける。店員も客も、店にいる全員が金子さんを見て楽しそうに笑っていた。

 「がんになって、周囲を元気づけたいと思った」と話す金子さん。その言葉に、まっすぐな強さを感じた。自分ならそんなふうに考えられるだろうか。ふと自問自答した。

 取材を終えた夜、焼き肉を食べた。肉のうま味を引き立てる同店のたれは最高で、あっという間に炊飯器が空になる。おいしいものとすてきな方々に、笑顔にさせられてばかりだ。いつの日か私も誰かを励ませるような、そんな仕事をしたいと思った日だった。

(向山俊恵)